宇宙メーザーを利用した観測で銀河の重さが従来の考えよりも50%重たいことが判明

銀河系の重さが、これまで思われていたよりも50%も重かったという報告がされました。これは銀河系の回転速度から割り出したのですが、この観測結果が正しいとすれば、銀河系の大きさは2万8000光年離れたアンドロメダ銀河とほぼ同じレベルになります。そして、大きさも重さも大きくなった銀河系は、アンドロメダと衝突するまでの時間も早まってしまいました。

ハーバード・スミソニアン天体物理学研究所の発表:www.cfa.harvard.edu/press/2009/pr200903.html

ま、どんなに早まったといっても、数十億年先の話ですが、他の近傍にある小銀河とぶつかる可能性はもっと高まっています。銀河系の伴銀河として知られる大小のマゼラン銀河も、そのうち銀河に飲み込まれてしまうんでしょうね。



今回の観測結果は、これまでよりも正確な距離の測定方法により得られた成果です。天体間の距離を計測する場合、これまでは天体の光度などの性質を利用していましたが、天体の光度は、例えば恒星の収縮や膨張、周辺星間ガスの濃度、連星や巨大惑星などの影響で正確には分からない場合もあり、かなり憶測というか、トリッキーな計算によりそれらしく出した数字です。それに基づいて距離を計測しても、やはり正確さに欠けてしまいます。

今回の観測では、宇宙メーザーと呼ばれる放射を利用しています。メーザーとはなんぞや? と思われる方も多いと思いますが、簡単に言えば、レーザーが可視光線の領域で見られる放射なのに対し、メーザーはミリ波より波長の長い電波領域で見られる放射のことです。

もともと、レーザーは Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation の頭文字を取ったもので、これに対してメーザーは Microwave Amplification by Stimulated Emission of Radiation の頭文字を取った言葉です。どちらも波長が揃っているため、増幅されて明るく、極めて観測に適した放射です。

そして宇宙メーザーとは、ある特殊な環境において、天体から特定の方向に増幅された電波 (メーザー) が放射されていることを指します。自然にレーザー光線のようなものが電波領域で発生しているというものです。

宇宙メーザー自体珍しい現象なのですが、銀河系内にもいくつか見つかっています。この領域を、地球が太陽をはさんで公転軌道のある地点とその反対側にある時に電波望遠鏡で詳しく観測すると、その領域が、さらに遠方の天体 (背景) に対してずれて見えます。非常にわずかな大きさですが、最近の技術の発達によって、そのずれを正確に知ることができるようになりました。

こうなれば、あとは簡単な三角法で地球 (正確には太陽) からそのメーザー領域までの距離が割り出せます。しかも、電波の観測では、光のドップラー効果を利用して天体の立体的な動きを知ることもできるため、様々な情報を得ることが可能です。

そうやって得られた情報から、地球近傍の銀河系中心部に対する回転速度を求めることができたってことなんですね。その結果、これまで考えられていた値よりもずっと早い速度で動いていたことが分かったわけです。

回転速度が高いということは、中心部から引っ張られる力、つまり重力が、より大きいということになります。そして重量が大きいということは、それだけ質量が多いということになります。これがニュースの結論ですね。おそらく、これまで以上に暗黒物質を増やさないといけません。あー、大変だ。



また、他にも分かったことがあるようです。それは、銀河系内でもっとも恒星が誕生している領域では、中心部に対して円軌道を取っていないということです。こうした若い星が多い領域では、楕円軌道になる傾向が強いそうです。そして、周辺よりも周回速度が遅いらしい。

さらに、これまで銀河系は2本の腕がある構造だと思われいたのですが、最近の観測から、実は4本の腕があるらしいことも分かっており、そのうち2本は比較的最近形成されたことも突き止められています。しかし、古い恒星ほど、古い腕に留まる傾向にあり、この理由が天文学者を悩ませて来ました。

今回の観測に使われた新しいメーザー領域の測定で、こうした問題も解明できるかも知れません。先ほどの、新しい星が周辺よりも周回速度が鈍いということが、1つの説明になると思われています。ただ、なぜ周回速度が遅くなるのかという理由は分かっていませんが。



なかなかダイナミックな宇宙の姿に、改めて凄さを感じますね。自分たちの住む銀河系でさえ、まだまだ分からないことだらけです。これからどんどん、いろんなことが分かってくるんでしょうね。そういう、エキサイティングな時代に生まれたことを感謝すると同時に、もっと先の時代に生まれて、いろいろなことを知りたかったなとも思いますが、それだけ沢山の夢を見ることができると考えることにしましょう。

しかしこうやって宇宙のことを考えると、人間のやっていることが何て小さくてつまらないことなんだろうと思い知らされます。同じ人間同士で戦争をしたり、お金のことで誰かを傷つけたり、仕事を奪って自分たちだけ生き残ろうとしたり。そんなつまらないことに人生を費やしていないで、もっと夢のあることに向かっていってもらいたいと思いますが、政治家とか金持ちは自分の周囲よりも遠くまで、そして先のことことまで、考えることも見ることもしないんでしょうね。ある意味、かわいそうな人たちです。