結局 IPv6 への移行はいつになるの?

総務省が「日本発の世界標準」を目指して、「新世代ネットワーク推進フォーラム」立ち上げを準備しているそうですね。これ、IPv6 の導入をすっとばして、まったく新しいネットワーク環境を作ろうってことでしょうか?

中国なんかも、IPv6 の導入に備えて、まったく新しいネットワークを丸ごと作っちゃおうってことやってるようですが、本当にできるんでしょうか? そもそも、現行の IPv4 がやばくなってきているってこと、一般の人がどれだけ理解してるんでしょうか?



まあ、いずれは IPv6 だって古い技術になるんでしょうけど、今はまず、とにかく、IPv4 から IPv6 に移行して、次の技術の開発や配備の時間を稼がないといけないんじゃないかって思うんですけどねー。



念のため説明すると、現在のインターネットは IPv4 というプロトコルを基盤にしていて、IP アドレスというものをインターネット上の住所として使っているわけです。しかし、そのアドレス数がそろそろ足りなくなってきたんですよ。

狭い国土の日本の住宅事情に倣ったわけじゃないのですが、日本をはじめとするアジア各国では、割り当てられている IP アドレスが急激な人口増加 (IP アドレスを使う機器の増加) により、あとちょっとで使い切ってしまうところまできています。

現実の世界で (分かりやすく例えて) 言えば、住む場所がなくなってきたって感じでしょうか。そうなると、住む場所を確保できない人 (IP アドレスをもらえない機器) が出てきて、ホームレス状態になっちゃうわけです。

現実の世界では、それでも公園とか施設とか道路の片隅とか、物理的に無理やり居着いてしまえる場所がありますが、ネットの世界ではそうはいきません。どうなるかというと、アドレス紛争みたいなことが起こり、機器同士で同じアドレスを使ってしまったりして、通信が混乱するかも知れません。最悪の場合、インターネット自体が機能しなくなる可能性もあります。



さあ大変。



ということで、それじゃもっとたくさんの人が住める (たくさんの IP アドレスが提供できる) ような仕組みを作ろうということで出てきたのが、IPv6 プロトコルなんですね。

でも、IPv4IPv6 は互換性がないので、そのままでは共存できません。引っ越しをするか、増改築みたいな作業をするか、そんなようなことが必要になります。身近なもので例えると、テレビ電波 (IP プロトコル) がアナログ (IPv4) からデジタル (IPv6) に変わるようなもんです。新しいテレビ (IPv6 用の機器や対応するソフト) を買うか、チューナーをつけないと (変換用の機器や技術を導入しないと)、テレビを見ること (インターネットにアクセスすること) もできなくなっちゃうってことです。

ただ、テレビの場合と大きく違うのは、切り替える時期が明確に決まってないことです。インターネットの基盤を一夜にして切り替えるのは不可能。なので、段階的な移行措置が必要になります。

その段階的な措置は、そろそろ始めないと、IPv4 のアドレスがなくなるまでに間に合わないんですよ。だけど、身の回りでそんなことが話題になっている様子はあまりないですよね。特に北米では、まだアドレスが余っているので、全然危機感なしです。



とまあ、IPv6 への移行にまつわる問題はこんな感じなんですが、何となく分かったでしょうか。つまり、IPv6 に移行したら、今使っているパソコンやソフト、その他のネットワーク関連機器がそのままでは使えなくなるんですよ。何らかの措置を講じないとね。

ちなみに、Windows XP 以降や Mac OS X 10.4以降、それと Linux などの UNIX 系 OS はすでに IPv6 に対応してます。でも、OS 以外のソフトウェアはまちまちです (UNIX 系ではほぼ準備完了)。それに、パソコン本体を含めてハードウェアの方も対応してないといけません。特に重要なのは、ルータです。IPv4IPv6 では、ルーティングのやり方が全然違うからです。

となると、ルータは買い換える必要が出てくるかも。これも実際にはいろいろ回避策が考えられてますが、ルータのメーカーとしては、買い替えさせたいでしょうね。そういう、いろんな立場の人のいろんな目論見があるので、事情は余計に複雑になってきているんです。



でも、IPv6 では一般の家庭でルータを使う必要が出てくるでしょうか? まあ、セキュリティ面から考えると、ルータはあった方がいいですね。でも、現行の IPv4 よりも IPv6 はかなりセキュリティが向上しているので、大した問題じゃないかも知れません。

あと、家庭内でワイヤレス・ルータを使うことで、ノートパソコンなどを家の中で移動したり庭に持っていって使うという用途にも使われていますが、IPv6 ではこういうモバイル機能が初めから備わってます。だから、この意味でも、ルータの重要性は低くなります。

それに、ルータを使うのは、基本的には不足しているアドレスを小分けすることが第一の目的。例えていうなら、アパートに住んでいる人の住所は、部屋番号で細分化されていて、大元の住所は建物そのものについている1つだけで済む。これと同じことをルータはやっているわけです。

だから、使える住所がものすごくたくさんあれば (つまり世界中の人がみんな一軒屋に住めるくらいの住所があるのなら)、アパートなんかに暮らす (アドレスを細分化する) 必要はなくなります。ということで、一般家庭でのルータの必要性は下がってくるでしょう。



ところで、実際、IP アドレスってどのくらいの数があるんでしょうか?

IPv4 では、約43億個のアドレス「しか」ありません。これは、世界中の人が一人ひとつのアドレスを使ったとしたら、それで終わりになる数です。先進国では、一人の人が、自宅のパソコン、会社のパソコン、携帯でネット接続しているのなら、それ用のアドレスも、最近では冷蔵庫やテレビまでも、ぜーんぶ IP アドレスを使っているわけで、この数が十分なものじゃないってことはすぐわかりますね。

もちろん、現実にはそのアドレスを細分化して使っているので (ルータの NAT 機能によるプライベート・アドレスの使用)、理論的には最大で約280兆個のアドレスがあると言えるのですが、いろいろ制限があるので、実際に使える個数はこれよりかなり少なくなります。

それに対して、IPv6 では、アドレスの個数は39桁の数字を並べたもの (約3.4×10の38乗個、もしくは2の128乗個) になります。ぴんとこないと思うのですが、この数字は、IPv4 の43億個を4乗した数です。つまり、地球の総人口 (約45億人として) の40億x40億x40億倍したくらいになるわけですね。これなら、足りなくなる心配はないでしょう。
現在なら一人で40億x40億x40億個のアドレスを使えるほどの数ですから。     (無理、使い切れないってば)



で、総務省さんは、この IPv6 のさらに先を考えているんだと思いますが (すごすぎ)、まずは IPv6 への移行を優先すべきじゃないでしょうかね。そして、その移行をいつやるか。もっと本腰入れないと、政局だけじゃなくて、通信インフラが混乱しちゃいますよ。この情報社会の時代に、通信インフラが機能しなくなったら終わりでしょうに。

(こちとらインターネットができなくなったら仕事にならないんですよ!)

お役人さんは、そういうこと考えないのかなぁ。横領する金の勘定よりも、税金を上げる算段よりも、こういう数字の計算をやってくれませんかね。ちゃんと、自分のやるべきことをまずやってください。お願いしますよ。



で、移行はいつ頃にしますか?