おごれるものもひさしからず

欧州委員会 (EC) が2004年3月に下した裁定を不服として控訴していたマイクロソフトは、欧州第一審裁判所で完敗しました。それが現地時間の17日のこと。米国内でも、違法行為に対する締め付けの緩和に異議を唱える州が今でも少なくありませんし、韓国などでも独占禁止法違反として断定されましたよね。OS に関しては、法的な見地から、各国で批難を浴びつづけているわけです。

でも、MS 包囲網は OS に対してだけ強まっているわけではありません。IBM も米国時間の18日に Lotus の無料版「Lotus Symphony」をリリースし、MS Office からシェアを奪い取ろうとしています。同じような動きは Google も見せており、『Google Docs』へのプレゼンテーション機能の追加も先日発表されたばかりです。

つまり基本的には、高いお金を出して MS Office を買わなくても、同じことが無料ででき、必要ならばそれを MS Office が対応する形式にすることも可能なわけです。MS Office でないとできない特殊な作業 (例えば翻訳で使う Trados での仕事) を除けば、MS Office にお金を出す「価値」があるのかどうか、これからは問われる時代になったということです。

いやー、長かったですね、ここまで来るのは。

古くは Netscape を駆逐するために Internet Explorer を無料で提供して、それを OS に組み込むことで市場覇権の野望を露にし、圧倒的なシェアを武器に、競合製品を売らないように販売店を脅したりして「軍拡」してきたこの会社も、「勝てば官軍」の時代ではなくなったことをようやく痛感するようになる時が来たんですよ。



確かに、MS には優れた人材と技術力があります。それも、半端じゃない人数の「天才級」の技術者たちが揃ってます。でも、問題は技術面ではなく、販売方針なんですよ。つまり、作る側と使う側を結ぶ人たち。この人たちが、作る側のことしか考えてこなかったから、今、そのしっぺ返しを受けているんです。



ところでこの構図、何かに似てませんか?



そう、今の自民党政権ですよ。競合相手を「数の力」でねじ伏せてきたこの政権は、自分達の都合のいいように選挙制度を変え (小選挙区だのとか比例制とか)、お金の流れが見えないように「5万円ルール」を作り、「美しい国」とか訳の分からないキレイゴトを言って弱者切り捨てに走り、閣僚が次々に不祥事を起こしても大して危機感を覚えず、まだ「力ずく」で乗り切れるとタカをくくっていたわけです。

そして、新しい総裁選びについても、地方に対して「公正な予備選挙を行え」と言っておきながら、国会議員たちは派閥の力学で公正な判断を封印しているんです。それが国民の目にどう映っているかは関係なく、自分達の立場だけを考えて。



「なぜ1円からなのか?」についても、「事務的に煩雑」とか、「柔軟な政治活動ができない」とか、「すべて公開するのが妥当かどうか疑問」とか、「政治活動の自由については、考えていかなければならない」とか、一般常識からは考えられないことを平気で言う人たちは、やっぱり国民生活がわからないんでしょう。アレですか? 政治家はお殿様みたいなもんだと思ってるんですか?

だいたいね、先進諸国の中で、政治資金収支報告書に領収書添付を義務付けてないなんて、日本以外でどこにありますか? 地方レベルでさえ、こんなの当たり前のことですよ。

ちなみにバンクーバー市では先日、市の収支報告書で、ピザなどの経費が多くなっているとして、市民団体から追求されたりしてます。

ピザですよ、ピザ。

こちらでは安いピザなら、1切れ1ドル弱で食べられます (それも顔よりデカイくらいの大きさ)。出前で1枚丸ごとのピザを頼んだとしても、たかが知れてますよね。でも、ちゃんと収支報告に入れているんです。日本円にして、とても5万円にもならないような金額なのに。

ちなみに何故ピザにお金を使ったかというと、火事や事故現場において不眠不休で活動する消防士や警官などの食事に充てたと市側は説明しています。それが全部本当かどうかは分からないですが、それなりに納得できる説明をちゃんとしているわけですよ。
「使ったけど、内訳は言えないよ」という彼の国の言い分とは違います。

で、赤城元農相とかの疑惑支出については、未だに公開されてないんですよね。これ、他の国からみたら異常ですよ。呆れてモノが言えないとは、まさにこのこと。



政治や経営に限らないですが、権力なんかを持つと、そこには腐敗した人間が集まってくるんですよ。歴史を見れば明らかじゃないですか。そして、
それが永遠には続かないことも。

今は情報がインターネットを通じてあっと言う間に世界中に広まります。情報統制をしようと思っても、中国やロシアでさえ難儀しているし、あの将軍様の国でも部分的には漏れているわけですよ (だから自由になりたいと逃げてくる人が後を絶たないんだし)。

そういう世の中にいて、未だに数の力だとか、政治家は特別だとか思っている古い人たちには、自分のしていることがどう映っているかを判断することさえできなくなっているんでしょうね。つまり、情報を管理するどころか、肝心の情報を拾い出すことができず、世の中に対応できず、そういう自分の置かれている状況さえ理解していないと。



さて、次に風の前のチリになるのは、誰でしょう?