Honest Error?

(今回はかなり長文です。時間のある時にお読みください)

アメリカからの輸入牛肉に、日米での輸入条件に違反した可能性のあるバラ肉が混じっていたそうですね。またですね。

アメリカはこれに対し、「手違い」という説明をして、「謝罪」とか手違いが起きた根本的な「原因の究明や今後の対策」についてはなーんにも言わないですよね。で、これを皆さんはどう思われますか?

同じようなこと、つまり、自分が犯したミスについて、謝りもせずに「間違えていたね。直したからそれでやってね」と繰り返し繰り返しあしらわれたら、どう感じますか? 普通は頭に来ますよね。

先日、ある翻訳会社との関係を切りました。直接の原因は、数字の入力ミスです。料金に直結する入力ミス。仕事を受ける側としては、料金が一番大事なものですよね。この会社、これまで何年にも渡って金額を間違えてきました。ひどい時は、本来の料金の半額くらいになっていたこともあります。

そしてそれを全部「honest error」と言って片付けていました。。。

こちらから「どういうことだ」と問いたださないと説明もない。説明しても、謝らない。「なぜ謝らないのか」と怒りのメールを出すと、ようやく一言「アイムソーリー」が出てくるだけ。そして必ず言い訳をして、今後間違えを繰り返さないように気をつけるなどの言葉はなし。こちらをいかに軽く見ているかがよく分かります。

自分の給料の金額が間違っていたら、それも繰り返し繰り返し間違っていたら、そして支払いが何度も何度も遅れたら、この人達は平気なんでしょうか。「honest error」だから仕方ないね笑って済ませる、出来た人間なんでしょうか。それなら凄いですね。

この会社に対して不信感を持つようになったのは、もう数年前に遡ります。まず、支払い期限を守らない。納品後60日以内に支払う (最近はもっと早く払うのが普通なのに) と契約書に明記しておきながら、しょっちゅうこの期日に間に合わないことがありました。問い合わせると、「担当者が今いなくて」とか、「サインをもらわなければならない人が出張中」とか、あげくに「経理用ソフトが壊れているので処理できない」とか返答し、ごめんさないの一言もないんです。

「こっちはあんたに仕事させてやってるんだよ。金だってうちがお前にめぐんでやってるんだよ。ちょっと遅れたくらいでガタガタうるせーんだよ」って意味に取るのは被害妄想でしょうか?

また、金額もしょっちゅう間違えてました。あまりに間違いが多いので計算書を見せるように言うと、しっかり間違ったままの計算書を平気で送ってきました。それを指摘すると、「ああ本当だ。直して新しい正しい金額にしておくよ」で終わりです。それ以来、この会社の計算は絶対に信用してません。発注書には必ず根拠となるワード数と、それを元にした計算書を送るよう要請し、翻訳会社の方もそれを了解しました。でも、最近はまた、計算書を送らなくなってきました。言わないと、約束も守れない会社なんです。

こんなこともありました。プロジェクト・マネージャ (PM) が一人しかいない会社なんですが、その人が休暇を取っているため、営業担当がプロジェクト管理を代行した時のことです。その人は忙しくて発注書もちゃんと送ってこないまま、かなりの量の仕事だけをこちらにさせました。数週間におよぶ案件でしたが、納品直前になっても発注書をよこしてきません。つまり、数週間に渡って、仕事の対価がちゃんと明示されてない状態が続いたのです。

それまでの関係もあったので一応信用して仕事してたんですが、さすがに何の金銭的提示もないまま翻訳したものを渡してしまうのは心配なので、発注書と引き換えに納品すると連絡しました。そしてよこしてきたのが、予想していた金額のほぼ半額程度のものでした。日本円にして、何十万円もの差がある訳です。

さすがに頭にきて、「この金額じゃ話にならない。この案件については正式に契約した訳じゃないので、お金も請求しないが、翻訳したものも渡さない」と連絡し、頭を冷やすために外に出ました。しばらくして帰宅すると、留守電やメールが山のように溢れてました。あれだけ時間がなくて発注書も書けないと言っていた営業担当者が、ものすごい時間をかけてこちらにコンタクトしてきている訳です。しばらくすると、また電話がかかってきました。

その時の言い訳も、もちろん「honest error」です。発注書に記した金額は、別の翻訳者の数字を元に計算してしまったものだったそうです。で、新たに計算し直した金額を提示してきたのですが、その計算も間違っている。そこでこの数字はどうしてこうなったのかを問いただすと、こちらの言い値 (こちらが自分で原文のワード数から計算した金額) で構わないから納品してくださいと平謝りです。

めちゃくちゃ頭に来てましたが、大きな金額だし、さすがにこれで気をつけるようになるだとうと思い、その時はそれで収めました。でも、これが間違いだった。。。

その後もこの会社のミスは続きます。発注書の金額と、送ってきたチェックの額面が違っていることもありました (数ドルでしたが)。どうしてこんなにミスが多いのか? そして、どうしてミスをしても謝らないのか? いったいどんな会社なんでしょうか?

そうそう、この会社のミスは数字だけじゃありませんよ。他にもいろいろです。例えば、特許翻訳なんかもちょっとやったりしたんですが、この会社は他に特許翻訳ができる翻訳者を抱えてなかったようで、こちらに何度か回してきたんです。ま、こっちも当時はあまり経験がなかったから、通常料金で2、3回引き受けたんですが、納期もどんどんタイトにしてくるし、いろんな要求を増やしてくるし、だんだんつけあがってきた感じでした。で、特許の場合はそれなりの料金を払うなり納期を融通してもらわないと出来ないと伝えると、それきり特許の仕事は来なくなりました。

その時、当時の PM はその話があまりにひどいことを理解していて、ちゃんとこちらの要望を会社側に強く伝えてくれたんです。彼女だけは、まともな人間でした。間に入って、他の人のミスを謝ってくれたり、気の毒になるくらいに良くしてくれました。この会社を切らなかったのは、そんな PM の存在があったからです。

でも、特許の話は続きます。ある時日本に2週間か3週間ほど帰国していたんですが、こちらに戻ってみると、その翻訳会社から何十ページにも渡るファックスが散乱していました。読んでみると、特許翻訳の出来があまりにひどいのでクライアントからクレームがあり、全文やり直すように文句が書かれていました。

ん? そんな仕事してないよ?

で、パソコンを立ち上げてメールを確認すると、先ほどの PM から連絡が来てました。どうやら担当者が特許翻訳= deja (← わたしのこと) と思い込んで、間違ってクレームのファックスを送ったらしく、その謝罪でした。でも、間違えて大量のファックスを送ってきた本人からは、一言も謝罪はありません。その後もずっとありません。そしてその人は、会社の責任者のようです。偉いもんですね。

そうした度重なるミスや失礼にも関わらず関係を維持してきたのは、先ほども書いたように PM がよく出来た人だったからです。PM は何度か変わったのですが、不思議と皆すばらしい人で、PM がいるから仕事を続けてきたようなものでした。

でも、今回切ることになった直接の原因を作ったのは、新しい PM でした。新しいといっても、もう1年半くらいはやっています。その人も、最初のうちは良かったんですけどね。途中で主任クラスに昇進したんですが (部下はいないみたいなので肩書きだけ)、それからだんだん他の連中と同じようになってしまいました。

実はこの会社、昨年後半に一旦切ったんです。「もうあなたの会社とは仕事できません」と宣言したんですが、ファックス大量送付事件を起こした例の責任者の人が、電話やメールで平謝りしてきて、今後支払いの遅れや数字のミスを無くし、「当たり前のこと」を当たり前にできるように努力するので、今後も仕事を受けて欲しいと頼んできたのです。

その時、こちらはかなり条件をつけました。

まず、どうやってミスをなくすつもりなのか、なぜ間違えをした時に謝らないのか、そうした事の説明を求めました。そして、支払いの遅れが度重なるので、仕事をしたら、その仕事の対価であるチェックを受け取ってからでないと、次の仕事は受けないという条件をつけました。どう思います? 決して無理なことは言ってないですよね。むしろ、かなり甘いなと自分で思うくらいです。それに、今までの非礼に対しては、謝れとしか言ってないんです (それでも責任者は自分が代表して謝るから、他の者は勘弁してくれと言い張りましたが)。

で、先方の回答は、全部条件を受け入れるというものでした。でもね、いろいろ言い訳をしてくるんですよ。特に、「うちは小さな会社ですから」っていう下りには呆れました。

はい? 小さな会社なら、支払いの遅れも、数字のミスも、ミスに対する謝罪がないことも、何でもありな訳? 何この人? そんな感じです。こんな会社、今まで見たことありませんよ。ちなみに会社のデータを調べてみると、社員10名ちょっと会社のようです。少人数とはいえ、いろんな事業を手掛けているようだし、カナダの翻訳会社としては割と大きい方じゃないでしょうかね。都合のいい時だけ「小さな会社」になるようです、この翻訳会社は。

で、「あんた違うでしょう? こっちだって一人でやってる零細企業だけど、そんな言い訳どこにも通じないのに、よく平気でそんなこと言えるね」という旨を書いたんです。そしたら、おっしゃる通りです、みたない返事をしてきました。そして、「社員全員で話し合いをして、全社一丸となって改善に取り組みます。支払いも、責任者がいなくてもチェックを発行できる仕組みを作るし (って、おい、そんなの当たり前だろ!) 、メールには必ず返事をするし (それも常識だろ!)、数字の入力ミスを減らすために、複数の人間でチェクする (今までチェックしてなかった訳?)」なんてことを書いてきました。正直、ちょっと唖然としましたね。

でも、自分達が悪かった、甘かったということは、とりあえず分かったみたいで、反省はしているようでした。少なくとも、その時はそう感じたんですけどね。。。

という訳で、しばらく様子を見て、状況が改善されるようなら通常どおりに仕事していきましょうということになったんです。

で、早速新しい案件について PM から連絡がきたんですが、「次の仕事をしたいんだってね」という書き方になってました。

「おい、あんたのところの仕事をしたいなんて一言も言ってねえよ! お願いされたから受けるんだよ」と、ちょっとカチンと来たものの、そこは大人の対応をして引き受けたんです。さすがにこの時は、メールにはすぐに返事をするし、納品後もなんと2週間でチェックが届きました。何だ、やればできるんじゃんという部分もあったし。

でもでも、これで安心してはいけません。チェックが早く届いたから「ありがとう」とメールを書いたところ、「これでこちらの取り組みが本気だと分かったと思うので、今後はまた今までどおりに取り引きをお願いします」と言ってきました。

へっ? たった一回まともに出来たらから、もう心配いらないでしょってこと? あれだけのことを、何年も平気でしてきたのに? これでまた、不信感が募りました。

で、案の定、その後の PM からのメールは、こちらの予定を聞いておきながら、こちらから日程やどんな案件の予定があるのかを書いたメールを送っても返事がない。挙げ句に、大きな案件があるからとこちらの予定を2週間以上も前からキープしておきながら、その案件にクライアントからストップがかかってもそれを知らせず (こちらから問い合わせたので判明)、仕事もないのに無駄に拘束してるんです。ふざけるにもほどがある。

で、仕事がいつ始まるか分からないなら、他の案件も来ているからそちらを優先すると伝えると、クライアントからのゴー・サインもないのに、すぐに翻訳を始めちゃって欲しいと言ってきた。例の責任者からの許可をもらったからという理由で。

え? クライアントがその案件を最終的にストップしたら、どうするつもり? そのクライアント、今までもしょっちゅうそういう事あったでしょ?

そして、その質問にも、PM は返事さえよこしませんでした

そして数日後、ようやくクライアントからのゴー・サインが出たというので、何事もなかったかのように仕事の依頼がありました。まず先に、 Trados で出力した結果による総ワード数と、期日についての概要などを連絡してきました。で、スケジュールの調整をして了解の返事をすると、翌日に発注書を送ってきました。そしてここで問題発生です。

最初によこした総ワード数と、発注書に記載された総ワード数が違っている。。。

早速、これはどういうことだと問いただし、金額も信用できないので計算書を出すよう連絡すると、「あ、数字間違えてた。修正した発注書を送るので、これにサインしてください」との返事。でも、間違えたことを謝る言葉はなし

前にも書きましたが、計算書は元々発注書に付けて送る決まりになっていたんです。でも、その計算書も、こちらが言わないと送ってこない。そしてそれも謝らない。この時点でかなりむかついていたんです。

そしてそして、さらにミスは続いていました。

まず、あるファイルのワード数を入力ミスしたために生じた最初の金額の間違いは修正されていたんですが、再計算された正しい総ワード数も、入力ミスによる間違いの総ワード数も、発注書に書かれている総ワード数と違うんです。

つまり、計算書に入力する段階で数字を間違え、さらに、発注書に数字を入力する段階でも間違えていたということです。

そのため、発注書には金額と総ワード数が両方間違って記載されていた訳です。たった1枚の発注書に、そのもっとも大切な2つの数字が両方とも間違って記載されていたんです、それぞれ別の入力ミスによって。当然、数字の確認なんかしてないってことです。

早速文句を言うと、ここでも「honest error」。それどころか、「そういう数字などの間違えを見つけて解決するために発注書を送っているじゃないか」とのたまいます。でも、その間違いを見つけるための計算書は一緒に送ってこなかったんですよ、この PM は。そして、「何故謝らないのか」といわれるまで、一言も謝罪の言葉はなし。

ここまでされて、それでもこの会社と仕事を続けようと思う奇特な方はいらっしゃるでしょうか? 普通の感覚を持っている人なら、まず無理だと思います。この会社、結構大きな仕事 (20〜40万円相当) の仕事をよくくれるんですが、それでも取り引きを続ける価値はないと思います。他の翻訳者に対しても、他の取引先に対しても、こんな調子なんでしょうかね。もしそうなら、この会社の先はそう長くないでしょう。もし違うのなら、特別扱い (悪い意味で) されてきたことになります。それはもっといただけませんね。

どちらにしても、この会社と気持ちよく仕事ができたことはほとんどありません。さすがに支払いが遅れても、最終的に払わなかったことはないですが、いつか支払いそのものさえ、滞るような気がします。今のうちに手を引いておかなければ、後で後悔することになるでしょう。本当にひどい会社でした。

ま、こんなあきれつがあって切った訳で、こちらの我がままじゃないことは分かってもらえると思います。直接顔を見れない関係の取引先とは、慎重にやりとりしないと危険ですね。フリーランスで仕事している (またはこれからする予定の) 方は、よく気をつけてください。何か「怪しい」「危ない」という直感を抱いたら、素直に見を引いた方がいいと思います。結局仕事というのは、人と人の信頼関係がすべてですから。信用できない人間とは距離を置くことが身のためです。

長文読解、ご苦労様でした。