地雷を検知する花は手放しで喜べるか?

北朝鮮がとうとう核実験を強行しましたね。規模は小さかったようで、たぶん第三国に売り込むためのパフォーマンスの意味が強いんじゃないかと思いますが、何をするのか分からない国なので怖いですね。まっさきに狙われるのは日本だろうし。

カナダのニュースでは、さすがの中国も今回ばかりは制裁に前向きな姿勢を示していると言ってました。日本の報道では、ちょっとニュアンスが違うようですね。あとはロシアが制裁に反対しなければ国連での動きも一気に加速するでしょうが、どうでしょうかね。

さて、軍事ニュースつながりという訳じゃないのですが、今日は地雷に関することを書いてみます。

地雷を見分けられるようにできる花が開発されたのは3年近く前のことなので、もうご存知の方もいらっしゃるでしょう。デンマークのバイオ・テクノロジー企業 Aresa Biodetection 社は、地中の成分により花の色が変わるシロイヌナズナを、遺伝子操作によって開発しました。

シロイヌナズナは、もともと開花までの期間が短く、ゲノム構造も完全に解析されている植物の1つです。それだけ研究対象としては扱いやすかったのでしょう。Aresa Biodetection 社では、地中に埋め込まれた地雷から放出される二酸化炭素を根から吸収し、それによって通常とは違う色の花を咲かせることができるように遺伝子操作を行いました。その結果、地雷があるかも知れない場所にこのシロイヌナズナを植えれば、その部分だけ花の色が違うことから見分けやすくなり、地雷除去に役立つという訳です。

先日、遺伝子組み替えについてその危険性を書いたのですが、今回はうまく使えばとても役に立つ技術だというお話です。ただし、遺伝子操作されたシロイヌナズナも、自然界に広まってしまった場合にどのような影響を及ぼすのかは不明です。Aresa Biodetection 社では、こうした遺伝子操作されたシロイヌナズナが自然界に影響を及ぼさないような仕組みも遺伝子操作で組み込んでいるようです。つまり、自らの種で自分の子孫を残せないようにしているのです。だからこれなら安全と言いたいのでしょう。

でも、生命というのは、環境に適応して様々な変化を遂げていくものです。もし遺伝子操作されたシロイヌナズナが何らかの理由で子孫を残せるようになってしまったら、地雷の問題よりもその影響の方が計り知れないものになる可能性もあります。また、この植物を餌にする昆虫などもいるでしょう。そうした食物連鎖の影響まで考慮されているとは言い難い気がします。

何でもかんでも新しい技術を否定するつもりはありません。むしろ科学技術には肯定的な立場にいるつもりです。しかし、技術を実用化する場合の慎重さが欠如している場合が多いため、それを心配しているのです。幸い、Aresa Biodetection 社はすぐに商業主義に走るような企業ではないようです。科学者主体の企業なのでしょう。問題は、金儲けを第一に考えているような人たちが、危険性を考えず、安全対策もないがしろなままなのに、すぐ商品化しようと考えることにあります。

日本でも、食中毒、原子炉の放射能漏れ、脱線事故など、人為的ミスによる事故がたくさん起きています。安全について、これほどないがしろにされている時代は今までにないでしょう。そういう意味でも、地雷を検知する花は安全性や予期せぬ事態に対する対応策を十分に整えてから商品化してもらいたいと思います。