遺伝子組み替え製品

先日、ここに時々コメントをいただく Riko さんのブログで「とうもろこし」の話題が出ていました。以前やっていた翻訳の仕事の関係で、とうもろこしなどの遺伝子組み替え (GM) 製品 (主に食品) について触れることが多く、ついそのことをコメントしてしまいました。いや、コメントしたこと自体が悪い訳ではないのですが、不安にさせてしまったかも知れないと思い、ちょっと悪かったかなと思っていたところでした。

ところが今日の CBC のニュースで、GM 食品のミニ特集をやっているではありませんか。ちょっと気になったので、その部分を録画して何度も見直してしまいました。

その特集によれば、現在カナダの市場に出回っているカノーラ油の80%以上、とうもろこしの約30%、そして大豆の約25%は GM 食品だそうです。特にカノーラ油は、カナダ全土で浸透しているとか。健康にいいからカノーラ油なんてことは、カナダではとても言えない状況のようです。

ニュースでは、カナダでもっとも有名な人物の一人であり、環境活動を精力的に進めている世界的に知られた科学者の David Suzuki 氏が、強い口調で語っていました。「政府は GM 食品を安全だと言っている。しかし、科学的にはまったく何のテストも行われておらず、安全などとは言えない。彼らの話は嘘だ」と。

ちなみにカナダ保健省は2002年、GM 食品の人体への影響を調べるために「Biotechnology Surveillance Project」という調査を開始しましたが、1年も経たないうちに打ち切りました。理由は、「調査があまりに難しい」とのことです。え? ええっ? そんな無責任なことをしておいて、安全宣言しているのですか?

カナダでの GM 製品は、10年前にカノーラ油から始まりました。GM カノーラ油は実験室で作られ、本来は栽培も使用も意図されないものでしたが、何かの間違いで栽培されてしまい、それが市場の80%を越える規模で出回っているのです。

こうした「何かの間違い」は、他にもたくさんあります。いくつか例を挙げてみましょう。

  • 米国で開発され、食用には許可されていない GM とうもろこし Starlink Corn が、Taco Bell のタコスの皮に混入していた。
  • 実験用に作った GM 豚が、カナダ国内の家畜用の餌に混入してしまった。また、米国では、GM 豚の肉が一般用の食品として出回ってしまった。
  • 米国で作られた未承認の GM とうもろこしが栽培され、ヨーロッパに輸出された。
  • 米国の GM コメが意図せず市場に出回ってしまった。
  • 厳格に管理されなければならないはずの GM 植物 (食用ではない芝生など) が、管理の網の目を潜り抜けて自然界に広まってしまった。

こうした「事件」が多数起きているにも関わらず、米国政府もカナダ政府はたいした対策をとっていません。それどころか、「すばらしい技術だ」と褒めちぎっているばかりです。現状では、人体への目立った影響は見られていないのですが、試験や調査がわずかしか行われておらず、科学者は安全とも危険とも判断できる状況にないと言います。それを、政府は「安全だ」と断言している訳です。

政府が安全宣言をして GM 製品を普及させたいのは、安くて大量に生産できる「技術」として業界の圧力に負けたからです。GM 食品は、まだまだ「実験段階」のものなのにです。

GM 製品は、上に挙げたものだけではありません。鮭などの魚類や、薬やプロテインを抽出する植物にも使われています。健康のため、安全のためと思って摂取しているその食べ物や飲み物は、害虫に強くするために農薬の遺伝子を組み込まれた作物で作られたものかも知れませんよ。

食の安全は、自分で守れるものではなくなってしまったようです。この先どうなるのか、とても心配です。欧州ではかなり厳しい基準を設けて対応しているようですが、北米ではお手上げですね。日本を始めとするアジアは、どうなんでしょうか?