冥王星が惑星から「矮惑星」へ

もうみなさんご存知のとおり、冥王星が惑星から格下げされて矮惑星となりました。正式な発表もここで見られます。いろいろと波紋が広がっているようですが、やはり将来的に課題や混乱が残らないようにした決定は、無難な選択でしょう。惑星がひとつ減ってしまったこと、新しい惑星の誕生を祝うことができなかったことは残念ですが、冥王星そのものがが無くなってしまった訳じゃないですしね。

新定義などについては、世界中で報道されているので、その詳細について書くつもりはありません。先ほどの IAU のサイトには詳細な説明も出ていることですし。ただ、ちょっと面白いと思ったのは、冥王星の名前の扱いについてです。

太陽系の惑星には、ギリシャ神話に出てくる神の名前が伝統的に付けられています。そして現在も、太陽系の惑星だけがギリシャ神話の神の名前を与えられる「特権」を持っています。冥王星は、「冥界の神プルート」の名前から付けられたのですが、今回惑星ではなくなったにも関わらず、その名前までは剥奪されませんでした。さすがに名前まで変わってしまうと、混乱が大きくなりすぎますしね。

今朝、1930年に冥王星を発見したアメリカの天文学者クライド・ウィリアム・トンボー氏の息子さんが、カナダのテレビ局に生中継で出演して、現在の心境について語っていました。もう、見るからにがっかりしたという感じで悔しさが滲み出ていましたが、感情的な主張や言い訳などはせず、淡々と答えていました。

冥王星が惑星ではなくなったと言っても、父親の業績が否定された訳ではないし、科学は常に変化する状況を受け入れなければならない、というような事をその方はおっしゃってました。実際、冥王星という名称が引き続き認められたことは、冥王星を惑星から外すことに反対意見があることを反映したものだとも述べてました。先に述べたように、太陽系の惑星だけが、ギリシャ神話に出てくる神の名前を付けられる訳ですから。ある程度譲歩したのでしょう。

これは別のニュースで紹介していたことですが、バンクーバーのある天文学者は、今回の決定は多くの天文学者にとって、衝撃というよりもこれまでの大方の見解に沿ったものだと語ったそうです。冥王星が惑星だという主張は、もともと発見者が米国人だったということにも影響されています。もし他の国の人が発見していたら、ここまで騒がれなかった天体かも知れません。またまた、科学の人間臭い部分が見えてきましたね。

そういえば大学の Junior (日本でいう3回生) だった頃の天文学のクラスで、ある生徒が「アイオってどういう星ですか」と教授に質問してました。アイオ? 初めて聞く名前でしたが、教授は「ああ、イオね」と笑っていました。言うまでもなく木星の衛星、それもガリレオ衛星の1つですが、学名も通称も「io」と書いて「イオ」と読みます。(ちなみにイオは、大きさも表面重力も、月より大きいんです。)

アメリカ人は、単語の最初にくる母音を、母音の元の音で言いたがる傾向があると、この時教授は言っていました。だけど学名はきちんと覚えなければダメだとも。いくらアメリカ人でも、勝手に学名を違う言い方にしてしまうのは止めなさいという意味です。

この教授はアメリカ人ですが、そういうことをきちんと教えてくれる方でした。個人的には、結構目にかけてくれて、教授生活最後のクラス (Independent Studies という個人授業みたいなもんですが) も受講したんですが、引退後すぐに亡くなられてしまったのが残念です。

話がそれましたが、とにかくアメリカでは惑星について、独自の見解や主張が見られます。だから冥王星についても、「科学界の言い分なんて知るかっ!」ていう風潮があるんですよね。ちょっとどうかなって気もします。ま、悪口ばかり言っても仕方ないのですが。

そういうことで、冥王星の問題はこれで片付いたと言えるでしょう。今度は別の恒星に地球型の惑星が見つかったというニュースを早く聞きたいものです。