グレゴリー・ペレルマン氏がフィールズ賞を辞退って。。。

今年初めから姿をくらませていたロシアの数学者グレゴリー・ペレルマン氏が、フィールズ賞を辞退したと伝えられました。この方、ものすごい数学の才能を持っているらしいのですが、研究に没頭したかったんでしょうね。名声も栄光もいらない。静かに研究する環境だけが欲しかった。きっとそんな思いで辞退したんでしょう。すごいなぁ。(どこかの国の政治家とか官僚とか出世争いに明け暮れるエリート・サラリーマンに爪の垢でも飲ませたい。)

それだけの才能があれば、おそらく人は羨むでしょう。フィールズ賞を受ければ、マスコミもうるさいし、講演会の依頼なども入ってくる。それでも賞を欲しい人はたくさんいる訳で(というか、ほとんどの人はそうだと思いますが)、素直に受け取ることができなかったペレルマン氏は、天才ゆえの不幸を背負っていたのかも知れません。才能がありすぎるっていうのも、考えものですね。幸せとは言えないのかもなぁ。なにせ、その才能ゆえに、数学を捨てざるを得なかった訳ですから。(引退されたそうですね。とても惜しまれます。)

ところで、先日「メリハリ」のことを書いたときに、「数学屋さんにとっては計算式を解くことこそが重要な部分でしょうが、物理屋にとってはやっつけ仕事」なんて、数学関係者の方にはちょっと失礼なことを書いたのですが、数学を見下している訳じゃないんです。もし気分を悪くされた方がいらしたら、すみません。数学、大事ですよぉ。

その証拠という訳じゃないんですが、実は大学にいた頃、数学の学士も取ろうかどうかかなり迷ったことがあるんです。当時「物理学」と「天文学」のダブル・メジャー(日本では二重専攻って言うんですかね)だったのですが、数学も入れてトリプル・メジャーにしようかな、なんて思ってたんです。その方が潰しも利くし、数学にちょっとはまっていた部分もあったので。でも、結局は諦めました。(ちなみにダブル・メジャーというのは北米ではそう珍しくありません。さすがにトリプル・メジャーはあまりいないですが。)

だって、数学を専攻するには
生物の実験のクラスを1年間取らなくてはならない
という条件があったからです。何故生物の、それも実験が必須なんだろう?(それ以外の条件は全部満たしていたのにぃ。)

生物は大好きでした。高校の頃、生物と地学を専攻したいなんて思ったこともあるくらいだし。残念ながら、その組み合わせは学年で「二人」しか希望者がなくて諦めさせられましたが、それだけ好きだったんです。でも、
実験は嫌い。
だって、ウサギの解剖とかあるし(今はなくなったようですが)、薬品とかの名前を覚えるのが苦手だったし(暗記もの嫌いです)。。。とにかく生物の実験は、高校の時でお終いと思っていた訳です。それが、大学に入って数学のためにやらなきゃならないなんて、それは理不尽というものでしょう。だから止めたんです。数学をなおざりにしていた訳じゃないんです。泣く泣くなんですよ。

だって、うちの大学は敷地内に NASA の施設があるくらい天文学では知られたところだったんですが、NASA が学生を募集していた時の条件は「工学系または数学を専攻した者」だったんです。数学専攻しておけばよかった。。。物理も天文も、NASA には十分優秀な人材が豊富に揃っていたんですかね。これからの NASA は数学者やエンジニアが背負っていくんだって感じだったんでしょうか。この時、数学の大切さを知りましたよ。しかも今じゃ、大学で勉強したことと一切関係ない翻訳をやっている訳だし。やっぱり才能がなかったのかな。(でも悪いことばかりじゃありません。その数年後に NASA でリストラが断行され、たくさんの職員が首になりました。万一職員のはしくれにでもなっていたら、今ごろどうなっていたことか。)

それにしても、本当に優秀な数学者であるペレルマン氏が、自分の研究だけでなく世界の研究施設でその能力を発揮したら、きっとものすごい発見や進歩があるんでしょうね。でも天才はそんな小さな(?)檻の中に住まわせることはできない。んー、科学ってのは、やっぱり人間くさいものですね。

先日のランドール博士といい、ペレルマン氏といい、若くて才能のある方がどんどん出てきますね。同じ世代の人間として、見習わなければならないことばかりで、ちょっと恥ずかしいというか、落ち込んでしまいそうです。。。頑張ろうっと。