後手後手の日本政府や当局の対応

欧米と日本ではいろんな違いがありますが、かなり昔から指摘がなされているにも関わらず日本政府が依然として世界的に遅れをとっている考え方があります。欧米、特に北米では、「事故は起きるもの」という考えがあり、その上に立って対策を講じたり規則を作ります。例えば車の場合、事故が起きても人への影響が少なくなるように、ドアにはかなり厚い鉄板が入れてあります。法律でそう定めてられているんです。重くなるので当然燃費は悪くなりますが、安全を重視する姿勢は正しいと思います。

ちなみに日本車は、日本国内では燃費を重視して鉄板を入れていませんが、北米では入れています。日本ではそういう法律がないからいいと、二重基準で車を作っています。

一方、日本では「事故は防ぐもの (起きないもの)」という考えが基本となり、事故があった場合についての対策や規則はあまり整備されていません。もし〜なら、ということを考えるよりも、事故を起こさないためにどうするかが優先されているんです。安全確認をしたり、運行規則をきちんと守れば、事故は起きないはず、という考え方です。これが一概に悪いとは言いませんが、では事故が起きてしまったらどうするのかについて、日本ではあまり深く考えていないように思えます。

1991年に42人の犠牲者を出した信楽高原鉄道衝突事故、カーブの勾配に耐え切れず車輪がレールに乗り上げて5人の死者を出した2000年の日比谷線列車衝突事故、まだ記憶に新しい、死者107人負傷者555人を出した2005年の福知山線列車脱線事故などは、どれも事故が起きることを想定してなかったために被害が拡大した事故の例です。どれも、ちゃんとルールさえ守っていれば事故は起きないという過信の結果です。人為的ミスなんて、想定してないんです。いいですか、事故は、必ず起きるものなんです。

こうした教訓を生かしてきたのは、航空業界くらいのもの。この業界は世界各国との乗り入れがあるため、世界的に厳しい欧米の規則が取り入れられてきたことが良かったのでしょう。しかし他の業界や分野では、残念ながら教訓が生かされていません。



今回の新型の豚インフルエンザに対する政府の対応も、まさにこれです。水際対策で国内での感染拡大は防げるとたかをくくっていたため、いざ感染が拡大すると、慌てふためくばかりで有効な手立ては打ててません。単に学校や職場を休みにしたりすることを要請するくらいですよね。でも、それによって生活が成り立たなくなる人のことは考えていません。行き当たりばったりの方針としか言えないでしょう。

そもそも水際作戦って、成田以外でもやっていたんでしょうか? 国際線の発着は、成田以外の空港もありますよね。それに、九州には韓国から船が着くし。韓国経由でメキシコや北米から日本に入った人って、スルーパスだったわけです。それなにの、水際作戦がこんなにすごいんだって報道がしつこくされ、麻生さんをはじめとする政治家や当局は「日本は水際で死守する」とか「効果がでている」なんてことを言って満足してた訳です。

実際に感染者を見つけたし、検疫が厳しいことを嫌って旅行を避けた人が出たため結果低に感染阻止に繋がったことは、多少なりとも効果があったとも言えるでしょう。ただ、これは手のひらで水をすくうようなもので、すり抜けた人もたくさんいたってことです。だからこそ、水際対策で防げなかった場合にどうするのかということを、もっと早い段階から考え、すぐに行動に移せるような準備をしておくべきだったんです。でも、場当たり的で政治的なパフォーマンスに重きを置く日本の政府や政治家は、そこまでしなかったんです。

それでは、いったいどういったことを念頭におくべきだったのか。これは、すでに感染が拡大している他国から情報を収集することで簡単に分かるものです。

例えば、インフルエンザのウイルスを正確に判定する施設を国内数箇所に設置しておけば、大阪や兵庫の感染者を調べるために検体を東京まで送らずに済み、結果が分かるまでの時間も短縮できたはず。今後もし全国から同時多発的に検査の依頼がきたら、パンクしてすぐに結果が出せなくなるでしょう (北米では早い段階でこれが問題になりました)。また、天候や交通機関の影響ですぐに検体を東京に送れない場合もあるでしょう。そんなことは端から分かっていたはずなのに、まったくそういうった対処をしてないですよね。なぜですか?

そして介護施設。在宅介護をしていて、介護する側が体力面や生活上の用事を済ませるために、どうしても介護者を施設に預ける必要がある身内がいるんですが、急に閉鎖されたら銀行にも買い物にもいけなくなってしまう。急に体調が悪くなっても、介護者を置いて病院にもいけない。でも国は、こういう人たちには何もしてくれないんです。ただ、家にいてくださいと言うだけ。つまり場合によっては命の危険も覚悟しろと言ってるんです。



結局、国は国民をちゃんと守れてないんですよ。麻生政権は弱者を切り捨てているだけ。そして、そういう問題についてこそ国民に知らせるべきだったのに、メディアは騒ぎが大きくなって視聴率が取れる内容ばかり報道している。何か深刻な問題が表面化してきたら、いかにも「それは大変だ」なんて感じで報じていますが、そういった情報は前から入手していたはずです。なのに、もっと早く報道することはなかった。なぜですか?

残念ながら、これが日本の現状です。今後日本国内での感染者数は北米と同様に急拡大するでしょう。その場合の対応策を今の日本政府は講じていると思えますか? そして自民党の人たちは、民主党の鳩山さんの悪口を言うばかりで、インフルエンザ対策についてはあまり口にしてないですよね。しょせん、国民のことなどより、次の選挙のことしか考えてないんです。

こんな日本に誰がしたんでしょうか? 国民が生き残るためには、少なくとも今の日本という国はもはや、頼りにできないような気がします。

麻生さん、どうせ解散も先延ばしにして延命を図ってるくらいしかでいないのなら、もっと役に立つ仕事を1つでもしてくださいよ。あなたのためにどれだけの人が苦しんでいると思ってるんですか? 人としての倫理観をまだ持っているのなら、もっとやることが他にあるんじゃないですか? それとも、総理大臣とは、それさえできない人なんでしょうか? 政権を途中で投げ出した前の2人の元総理は、政治家として未熟でしたが、人間的にはずっとまともでした。でも、現政権ほど、国民をなおざりにしている政府は過去になかったと思います。残念、としかいいようがないですね。