返済不要の奨学金についてちょっと思う

文部科学省が、返済義務がない奨学金制度について有識者による懇談会を開き、7月までに提言をまとめるという報道がありました。他に、学用品費の支援制度、幼稚園、保育園の無料化なども議論するようです。

えー、何か偉そうに「提言」なんて言ってるようですが、世界の常識として「奨学金 = Scholarship」という言葉が使われる場合、これは基本的に返済不要のものなんですよ。返済義務があるのは、北米の場合は Student Loan などと呼ばれ、Scholarship とは呼びません。返済義務がありながら奨学金という言葉を使っているのは、日本くらいじゃないでしょうか。元々、これが間違っていると思うんですけどね。 (なのに今更「提言」って、どうよ? ありがたく思えってこと?)



私事で恐縮ですが、アメリカに留学した時 (州立大学)、学部からと大学からそれぞれ1回ずつ奨学金を頂きました。学部から頂いた奨学金は個人 (社会的に成功した卒業生など) がスポンサーになっているいるものの1つで年間で500ドルでしたが、大学から支給されたものは全ての学費・経費などをカバーしており、年間7700ドルくらいだったと思います。もう15年くらい前の話なのですが、学費は毎年のように値上がりしているので、現在の金額にしたら相当なものだろうと思います (これでも公立なので安い方です)

いずれの奨学金も成績や経済状況などが選考基準になるのですが、卒業後はどこに行ってしまうか分からない留学生に対して (州の税金を使って) 学費全額免除なんて太っ腹なことをしてくれるのはすごいなと、当時はいたく感動しました (いや、今もしてますけど)。政治的には嫌いなアメリカですが、教育に関しては尊大さを覚えます。強い者に対しては徹底的に厳しくするところがある反面、弱者には損得勘定なしで手を差し伸べてくれる気前のよさがあります。実際、この奨学金をもらえなかったら、親の援助なしで留学していた貧乏学生だったので、恐らく卒業できなかったと思います。もう、恩人のレベルで感謝してますよ、アメリカの大学様には。

それに比べると、日本の教育制度はどうでしょうか? 学費に困っている人に対して、とても冷たいですよね。大学でなく高校での話だそうですが、一部には授業料を払えるのに払いたくないから払わないという人もいるものの、経済的に困っている人に対しても、卒業証書やアルバムを渡さなかったりとか、とても教育者のやることとは思えないことがあちこちで発覚しています。恐らく、表に出てないものの似たようなことは、もっと沢山あるんでしょう。子供に罪はないのに。

才能のある子供というか、子供はみな才能を秘めているんです。学校で勉強したその時に開花する子もいれば、時間が経ってから芽が出る子もいます。でも、基本的な教育を受けていないと、それが世に出るチャンスはグンと減ります。それはその子の人生を左右するだけでなく、社会にとっても大きな損失になります。そういうことを、日本の教育制度や教育者、そしていつもながら批判の矛先になりますが、政治家がまったく分かってない。その結果として、今の (教える方も含めた) 教育レベルの低下が問題になってきてるんですよ。

だいたい、日本では、子供に教育をしてあげてやってるという感覚がないでしょうか? 本来教育とは、子供のために大人が提供してあげるべき義務の1つなはずです。将来を担う子供達に学ぶ機会を平等に提供するのが大人の勤め。才能があるとなれば、「他のことは心配するな、お前は勉強だけしていればいい」という環境を作ってやるのが政治家や教育者の責任です。親だけの責任じゃありません。

それなのに、お金をかけて教育を受けさせてやる、という勘違いをしている人が多すぎです。政治家も教育者も、自分達は親の金でのうのうと大学まで卒業し、苦学している人たちのことなど考えたこともないって輩が多いでしょう。田中角栄くらい苦労した人ならまだしも、二世、三世の苦労知らずの議員さん、大臣さんが仕切っている世の中ですから、こうなっちゃったんでしょうけどね。だから何をやるにしても、今の政治家は小粒なんですよ。田中角栄は悪いこともしましたが、とにかくやることが大きかった。今の世襲で出てきた政治家には、逆立ちしてもこんなでかいことはできないでしょう。



まあ、政治家批判は切りがないのでこのくらいにしておくとして、返済義務がない奨学金制度の導入なんて議論の余地ないでしょう。今すぐにでも始めるべき。そして、現在返済で行き詰っている人たちにも、優秀な成績を残したとか、社会で大きな貢献をしたとかいう人には、返済免除や減額といった措置も必要なんじゃないでしょうか。

もっと、勉強をしたいと思っている子供達を大事にしないと、日本はダメになっちゃいますよ (すでに手遅れという気がしないでもないですが)。

まあ、財源という問題があることはおろそかに出来ませんが、国会議員の無料パスを私的に流用しちゃうような無駄がいっぱいあるんだし、ロクに仕事してるように思えないんだから、議員報酬をもっと減らせばいいんじゃないでしょうか? 一般家庭の収入から考えたら、いくらなんでももらい過ぎでしょう。将来の保証がないからといいたいのかも知れないけど、派遣切りなんかされてる人達のことは、単に一時しのぎの措置をしただけで、今だに抜本的な対策は何もしてないんだから、議員が偉そうに語れる話題ではないんだし。だいたい、比例制なんかで、民意を反映してない政治家が長期にわたり議員になっているなんて、民主主義に反することを平気でしてるんですからね。このこと自体、将来の保証がないなんて言えない理由になるでしょう。本当に自分達のことしか考えてないんだよなぁ、政治家って。

ところで、麻生さんも民主党の代表候補のお二人も、教育について何か語ってましたっけ? 自分達の票取り、人気取りのことばかり、そして相手をけなすことばかりで、今の政治家から学ぶことって何もないような気がします。あ、反面教師と考えればいいのか。

確か中国の故事にも (誰の言葉か忘れたけど)、どんな人でも自分の教師になる、というようなものがありましたね。でもそれは、優れた人もいればダメな人もいるという環境でのお話。日本の政界には、優れた人っているんでしょうか? 日本全国にどれだけの政治家がいるか知りませんが、橋下さん、東国原さんくらいしか名前が出てこないってのは、どうよって感じじゃありませんか?

果たして、返済義務がない奨学金制度はちゃんと実現されるんでしょうか? ちょっとだけ盛り上がって、結局選挙絡みでうやむやにされちゃう議題って多いですからねー。つまりは、自分達の利益にならないことについて、政治家は真剣に考えてないってことだろうなぁ。

あー、今ちょっと調子悪くて頭痛してるんですが、よけいに痛くなってきちゃいました。政治とか教育のことで頭や胸が痛むならまだしも、政治「家」のことで頭が痛くなるような日本て、大丈夫なんですか?