豚インフルエンザより怖い殺人カビ (Deadly Fungus) = クリプトコッカス症菌

5月6日現在、カナダの感染者数が201人 (BC 州は54人) に達した新型の H1N1 A 型インフルエンザ (豚インフルエンザ) は、やはり拡大が続いているものの、メキシコ人以外ではアメリカ人が1人しか亡くなっていません。また、カナダ保健省の微生物学研究室が新型インフルエンザを詳しく調べた結果、-- カナダとメキシコのインフルエンザウイルスは -- (← すみません、抜けてたので加筆しました)  遺伝子レベルではまったく同一のものだったことが判明しました。これは大きく2通りの考え方に繋がります。

1つは、本来メキシコでの感染も普通のインフルエンザと変わらぬ程度の危険性しかなく、単に適切な処置がなされなかったために死亡に至ったケースが多くなったのだという考え方。大方の見方はこちらです。

もう1つは、本来このウイルスはかなり危険なもので、メキシコ以外でも致死率が高くなる可能性はあるという考え方。こちらは、世界中でちょっとした兆候でもあればすぐに隔離・治療が行われているので、メキシコ以外ではこの騒ぎが幸いして軽症で済んでいるというシナリオが成り立ちます。これが正しいとすると、秋になってからかなり大変なことになるかも知れませんが、現在はタミフル以外の治療法がないにも関わらず軽症で済んでいることから、この説は少し無理があると言えるでしょう (というか、そう願いたいでsね)。

いずれにしても、あまり大騒ぎをせず冷静に対応すべきでしょう。ちなみに今日も夕方のラッシュ時にスカイトレインに乗ったりしたものの、マスクをしている人は1人もいませんでしたし、インフルエンザの話題を耳にすることもありませんでした。ニュースでは、WHO による発表や感染の状況を細かく伝えていますが、恐怖を煽るような映像やコメントなどを強調して伝えることはありません。その点が日本とだいぶ違うところですね。



ところで、BC 州都ビクトリアがあるバンクーバー島 (バンクーバー市ではないですよ!) では、不可解な殺人カビ (Cryptococcus gattii / クリプトコッカス症菌) による病気 (クリプトコッカス症) が問題になっています。科学者の間では、今回の新型インフルエンザよりも懸念する声が少なくないとのことです。

過去10年で死者9人を出しているこのカビは、元々熱帯地方の土壌などに存在が確認されていたもので、本来カナダには存在しないはずでした。それが、恐らく渡り鳥の足につくなどしていつの間にか持ち込まれたと考えられています。専門家の間では、数十年前には入り込んできたのではないかと推測されていまが、何故かこの10年の間にバンクーバー島で大発生したのです。

カナダでは1999年から2007年にかけてだけでも、クリプトコッカス症に216人が感染しており (多くはバンクーバー島在住または訪問者)、前述のように現在までに死者も9人にのぼります。そのうちの一人は、26歳の健康な若者でした。アメリカでもかなりの感染者がでており、致死率は12%と言われます。

このカビは通常、健康な人であればほとんど感染しません。HIV に感染したなど、免疫力の極端に弱っている人だけがかかるとされていました。それがここ10年の間、バンクーバー島で野生動物の不可解な死骸が多数見つかり、クリプトコッカス症によるものだと確認されました。また、クリプトコッカス症が人にも多数感染していたことが分かったんです。当初はバンクーバー島だけでしたが、現在はバンクーバー市を含む BC 州の各地に広がっています。アメリカのワシントン州でも確認されており、バンクーバー島から広がった可能性があります。もっとも、南部の方では別の経路が疑われると思いますが。



クリプトコッカス症菌がなぜバンクーバー島で大発生したのかについては、最近になって環境の変化が原因ではないかとの説が出ていますが、真相は謎に包まれたままです。渡り鳥ははるか昔からいるわけですから、確かに最近になって急にカナダに入ってきたのは不思議です。唯一、最近の環境の変化によりクリプトコッカス症菌がカナダでも活発に活動できるようになった考えれば、一応つじつまが合います。

また、本来免疫機能が落ちている人にしかかからないクリプトコッカス症に若い健康な人が感染して死に至ったことについても、まったく理由が分かっていません。完全な治療法も確立されているとは言いがたく、患部を切り落としたり、抗真菌剤を投与する方法などがありますが、いろいろ問題があるようです。自然治癒はほぼあり得ないため、インフルエンザよりも危険といえるでしょう。

症状は、肺や上部気道などから全身に広がって髄膜炎脳炎を起こし、頭痛、発熱、無気力、昏睡、人格変化、記憶障害、失明など、かなり深刻なものだそうです。これは怖い病気です。インフルエンザどころではありませんね。



やはり、最低でも手洗いとうがいは、インフルエンザの季節だけなく、常に心がけるようにしたいものです。そして、こうした病気が広がる原因になるような環境破壊に繋がることを、一人ひとりが食い止めるように行動を起こすべきでしょうね。新型インフルエンザもクリプトコッカス症も、人類への警鐘として真剣に受け止める必要があると思います。