将棋名人戦でのサインおねだり事件についてちょっと思う

この週末は、世間ではイースターのロング・ウィークエンドなんですが、その最中にまた1つ歳を喰ってしまいました。またおっさん度が増えたわけです。。。ちょうど知り合いの所で誕生日祝いなどをしていただき、久しぶりに Whole の誕生日ケーキを頂きました。まあ、ある程度人数がいないと、こんな大きさのケーキを食べきることはできないですからね。いい歳をしてちょっと照れくさかったですが、ありがたいことです。

Birthday Cake!
美味しかったです。ありがとうございました!
ちなみに真ん中にあるのはドラゴンフルーツです。
薄めのメロン味のキーウィフルーツ、
リアル胡麻和えって感じの果物です。

a quickr pickr post



さて、将棋名人戦対局中に、羽生名人の手番において朝日新聞委託記者がサインをおねだりしたとのことで、ケーキの余韻に浸りつつ (← いえ、嘘です^^;) 遅ればせながらその映像を拝見しました。

うーむ、この方の言い訳は、郷田正隆挑戦者の手番の最中だと勘違いしていたとのことですが、ベテランの方ですし、いずれにしても失礼にあたることは理解できるはずです。

で、ここで2つのことを考えました。1つは、なぜこの朝日新聞委託記者がこのような暴挙を犯したのか、ということ。そしてもう1つは、なぜ羽生さんは怒ることもなくサインに応じたのか、ということです。



この朝日新聞委託記者は75歳ということで、このような名人戦の観戦記事を担当するくらいですから、礼儀をわきまえた方のはずです。それなのに、誰が見ても唖然とするような行動と取るということは、一時的に状況判断ができなくなってしまったと考えるのが自然です。つまり、本人は礼を失するというようなことをしようとしていたのではなく、礼を失するのではないかという判断ができないほどの (一時的なり初期の) 認知症ではないのか、ということです。

まあ、意地悪な目で見れば、初めから礼を失することは承知の上で、テレビにも映し出されながら (= つまり証拠として残る)、対局中に羽生名人から頂いたサイン (= 当然、今後ものすごい価値が出てくる) を自慢したかったのかな、とも取れますけどね。何十年、何百年と時間が経った時、恐らくこのようなすごいサインが書かれた扇子は、ものすごい価値が出ることでしょう。でもまあ、恐らくそこまで (ある意味で) 大物じゃないと思いますけど、この方。



それから、羽生さんが怒ることもなくサインをし、冷静さを失わずに対局を続け、さらに勝負に勝ったのは、これまた凄いことです。でもこれは、羽生さんが単に人間として出来た人だ、というだけでなく、能力的な意味でやっぱり凄い人なんだってことを見せ付けた場面じゃないかと思うんです。

つまり、映像でみる限り、普通の人は羽生さんが考えを中断してサインをしてあげて、改めて次の手の考えに入ったと思いますが、恐らく羽生さんは、朝日新聞委託記者がサインをねだり、驚きつつもそれに応じてサインをしている間、次の手を考え続けていたんじゃないかと思うんです。

超人コンテストみたいので、暗算をしながら他の人と全く関係のない話をしている人を見たことありませんか? そういう、全く異なることを同時にこなしてしまう人っているんですよ。で、恐らく羽生さんも、そういうレベルに達しているんじゃないかと思うわけです。そうであっても、全然不思議じゃないですよね、羽生さんなら。

だいたい、プロ棋士の場合、少なくとも数十手先までの駒の動きを頭の中で考え、相手が実際に指した駒に応じて、その何万通りもの予想からすぐに最良の手を判断できるんです。そしてそれは、個々のケースを別々に、混乱することなく考えられるからこそできる芸当だと思うんです。

例えば、対局中にはお茶を出されたりする訳ですが、恐らくその時に係りの方を見て、気を使い、会釈したりする訳です。また、手持ちの残り時間が少なくなると、秒読みが始まります。これも恐らく、普通の人なら焦って冷静に考えられなくなるはずですが、プロ棋士はカウントがゼロに近づくギリギリまで考え (= ちゃんとカウントも聞いている)、その中で最良の手を見つけ出す (= カウントを聞きながら駒の動きを考えている) わけです。 (恐るべし、将棋の世界。。。)

このように、普通の人ならそれだけで気が散るような場面でも、プロ棋士は動じることなく、思考が止まることはないのです。だから羽生さんは、考えを中断せずに「ほんの10秒か15秒で済むことだ」と判断し、サインに応じたんだと思います。

いやー、将棋の世界の奥深さを見せ付けられた瞬間ですね。 (ちがうか?)