裁判員と暴力団

裁判員暴力団員が選ばれたらどうなるのか。昨日こんな記事が朝日コムに載っていましたが、どうして今までそんなことに気づかなかったのでしょうか? いや、気づかなかった訳がないですよね。どう考えても、この制度を施行するためにそういう都合の悪いことを周知しなかったのではないかと思います。要するに、意図的に隠して、プラスの部分だけを宣伝してきたのではないでしょうか。

もし実際に暴力団裁判員になったら、記事に書いてあったように、他の裁判員が脅されたり、少なくとも脅威を感じて、言いなりになる可能性は十分にあるでしょう。でも、それだけじゃないと思います。

裁判員に選ばれたら、そのことを口外してはならないことになっていますが、そんな決まりごとを暴力団が守るでしょうか? 組員や幹部にそのことを伝え、その裁判で被告になっている人物の情報を集めとしたら、どうなるか? 例えば、裁判員になった暴力団が他の裁判員の情報や裁判自体の情報を組織に伝え (公判中に帰宅できますからね)、その情報を元に他の裁判員に圧力をかけると同時に、暴力団は組織として被告の関係者らに対し事を有利に運んでやるから謝礼を払えと言ってくるかも知れません。もしくは、原告を脅迫して金品を要求する可能性だってあります。つまりビジネスにしてしまう恐れがあるんです。

これは手口が巧妙化してくれば、暴力団だけでなく、他の犯罪組織も関わってくる可能性があります。オレオレ詐欺よりも悪質な問題になるかも知れません。怖いですね。

前にも書きましたが、公判中に一時帰宅さえ可能なこの裁判員制度は、安全面や秘密漏洩、外部からの情報コントロールなどの懸念に対してきちんとした対応が取られておらず、いわば欠陥だらけです。せめて、公判中は不便であっても、外部との接触はさせないべきでしょう。それが裁判員一人ひとりの安全にも繋がります。でも、そうした配慮さえ見えません。安全性より利便性を優先して国民に「やり易さ」だけを売り込んだんです。

これだけ問題が多いのに、なぜ施行を急ぐ必要があるんでしょうか? いったい、誰のための裁判員制度なんでしょうね。

もし裁判員候補になっても、同じ候補の中にどんな人がいるのか、被告や原告は誰なのか、そういった情報は恐らく、実際に裁判員に選ばれるまでは聞かされないと思います。そして、他の裁判員や被告または原告のいずれかに暴力団関係者が混じっていたとしたら、あなたならそれでも裁判員になって、悪をただし、法の裁きを受けさせる自信がありますか? 進んで (例え報復などの危険を冒してでも) その役割を担いたいと思いますか?

この制度は、今のままでは、国民を危険にさらす可能性も秘めたものです。制度に不備はつきもの。だからこそ、慎重に施行までに吟味を重ねる必要があるはずなのに、衆議院参議院の反対を無視して強行採決するのと同じく、国民の意見を無視して実施しようとしてますよね。いったい、なぜなんでしょうか?

どうも日本の法制度は、未熟なままで見切り発車することが多いように思えます。とりあえず出発して、後で修正していけばいいさ、という安易な感じを受けます。これは、立法機関、つまり国会を運営している国会議員さんたちの資質の問題にも直結します。まあ、国会議員から選ばれた、国の運営をつかさどる最高の地位にある首相が、この程度の資質なのですから、仕方ないのでしょうけど。

景気対策にしても、福祉や就労の問題、そして裁判員の問題にしても、何かひとつでも国民を納得させる事を政府は行っているでしょうか? だれがどう見てもおかしい給付金を意地でもやり遂げようとしている首相をはじめとする自民党議員は、もう国民の代表じゃありません。いったいいつまで、国会議員や内閣の甘い汁 (=高給) を吸い続ければ気が済むんでしょうか。



明日20日 (北米時間) には、アメリカでオバマ氏が米国大統領に就任します。支持率は8割を超えています。片や麻生さんの
」支持率
も8割を超えています。この国は、いったいどうなてるんでしょうか。もう、怒りを通り越して、悲しくなってきますね。