混迷するカナダの政局

この週末、カナダの政局は、降って沸いた野党連合による政権奪還計画の発覚で混迷化しました。

先日の選挙で過半数は取れなかったものの、勢力を伸ばした保守党政権は、とりあえず国民の支持を取り付けたわけです。

それに対し、その前の選挙で保守党に政権を奪われた自由党は、今回の選挙でさらに議席を失い、失速しています。特に自由党党首のディオンは、政治家としての能力はあるでしょうが、英語が苦手でコミュニケーションに問題があり、カナダの首相になるには問題がありすぎます。今回の選挙の敗因の1つは、彼の英語能力の欠如でもあるのだし。

それでもディオンは政権奪還に固執し、とうとう野党3党で連合して、保守党政権を転覆しようと企んでいるわけです。

現在の保守党政権には、かなり批判もあります。しかし堂々と選挙で勝ったのだし、まったく無能などこかの国の政党・首相よりははるかにましです。事実、支持率を見れば、どこかの国の政権よりずっといいことは確かです。

野党が共闘して新政権を作った場合、日本ではこれまでにも連立政権が何度かあり、現在もそうですが、これはカナダでは史上初の出来事になります。つまり、連立による政権の不安定さをどのようにまとめていくのか、政策の違いの妥協、閣僚ポストの分配、選挙結果を覆して力ずくで政権奪還を行うという民主主義の根底を揺るがしかねない行動をどう国民に説明するのか、全然準備ができていないわけです。

しかも、この連立構想が密かに持ち上がったのは、ほんの数日前です。ま、実際にはそれぞれにそうした考えをかなり早い段階から持っていたようですが、申し合わせをしたのはごく最近です。そしてそれが、密談のテープがリークして公になったのも、この週末になってからです。こんな調子で、果たしてまともな政権が誕生すると思っているんでしょうか。仮にうまくいったとしても、すぐにほころびが出て、すぐまた選挙になるのは目に見えてます。専門家からも、そうした指摘がされています。



確かに現在の保守党政権には問題もあります。でも、多くの人の目には、選挙で負けておきながらすぐに党首をやめず、次期党首が決まるまでその座に居座りつづけるディオン自由党党首が首相になりたいというわがままでやっているように見えます。実際、今回の連立構想を持ち出したディオンは、自分の政党をまとめることがまだできていないため、相手の新民主党が乗る気になっているにも関わらず、話がまとまってない状態です。こんな状況で、3つの党をまとめることなど無理でしょう。

日本のように、首相を与党で持ち回りにして、都合が悪くなると辞めてしまい、他の誰かに代わることでとりあえずの人気を取り、何とか延命しようとするのは論外ですが、カナダの政局もこのままでは同じような運命を辿りそうで心配です。

経済が混乱しているこの時期、そんな勢力争いをするよりも、優れた政策を打ち出して超党派の努力をすることで国民の声に応えて欲しいものです。特にディオンには、国民はディオンに投票してないってことを理解してもらいたいものです。でも、政治家ってのは、どうせ国民の声なんて聞かないんですよね。選挙で負けた時に潔く身を引けば、いい政治家として評価も残り、次の機会もあったでしょうに。これで彼の政治生命は終わるかも知れません。



この決着は、カナダの国家君主であるエリザベス女王の代理、Governor General が外遊から帰国し、報告を受けた後で決断するとのことですが、あまりにも幼稚なレベルの、テレビチャンネルの取り合いのようなこの騒ぎに、経済危機で失意の只中にあるカナダ中が呆れて、ただびっくりして、騒然としています。カナダに永住して、今までで一番この国に失望した事件ですね。しかもまだこの先、どうなるか予断を許さない状況ですけど。  (世の政治家さん、いい加減にしてくれよ!)