古典に親しむ

平城遷都1300年祭ということで微妙なマスコットキャラクターが大活躍 (?) している2008年ですが、今年は源氏物語千年紀 (Millennium Anniversary of "The Tale of Genji") でもあります。ちょうど1000年前に完成した源氏物語、作者の紫式部はその時 (つまり1000年前の今ごろ)、「やっと終わったぁ〜」と安堵してゴロゴロしてたんでしょうか。

いや、そんなことはどうでも良く、これを機に源氏物語をちゃんと読んでみようかなと思いちょっと探してみたところ、いろいろなデータが無償で公開されていました。中でも、プロ顔負けの音読データを公開している「文迷 (源氏物語 婆の部屋)」や、源氏物語の原文・現代語訳など多数の古典 PDF データを公開している「平成花子の部屋」などはお勧めです。

特に平成花子の部屋では、長編小説である源氏物語の要約を読むことができるので、まずこれで大雑把な知識を頭に入れてから、じっくり全文を読むといいのではないでしょうか。

しかーし、こんなすばらしいデータが公開されていても、実際に読んだり聞いたりしなことには意味がありません。こういうのって、データを落としただけで安心してしまうんですよね (汗)。ほら、映画とかを録画しまくって、後で観るつもりが、まだ観てない DVD がどんどんたまってしまうことってあるじゃないですか。何か、それと同じ感じです。



そこで、という訳じゃないですが、先日帰国した時に「中国古典 1日1語」という文庫本を買ってきたので、最近は暇を見て繰り返し読んでます。帰国後のブログで時々「荘子」がどうたらって書いていますが、実はこの本から仕入れた知識なんですよ。   (← うすっぺらい知識ですみません。)

中国古典なんて、中学や高校の授業でちょっと習った後は、アリゾナ大在学中に中国史入門なんてクラスを取ってかじった程度ですけど (アメリカ人的な中国思想の捉え方は面白かったですよ)、改めて昔の人はすごいなと思いますね。

老子荘子孔子孟子、etc. といろんな書物がありますが、恥ずかしながら「〜子」は著者名ではなく書籍名だったことをようやく知りました (著者の場合もあることはありますけど)。あちゃ〜、イタイですねこれは。

その本では、特に荘子の考え方が魅力的に思えました。大局から物事を見て、日常の様々な争いや確執などを「ちいせい、ちいせい」と言っているんですね。何かね、時々広大な宇宙のことを考えると同じような気持ちになるのですが、既に2〜3000年も前の戦乱時にこういうことを理解、把握し、説いていたとはすごいですよね。



そういえば「宇宙」という言葉ですが、これは元々中国語で「時間」と「空間」を表す意味なんですよ。20世紀になってアインシュタインが「時空間」という概念を示して以来、宇宙が時間と空間の密接な結び付きの中で存在していることはよく知られるようになりましたが、中国ではずーっとずーっと前から分かっていたような感じです。ちょっとすごいなぁ。



それから、戦国策の中に出てくる、死んだ馬の骨を高く買い取ってきた話も印象的でした。よき人材を集めること、人材を使いこなすこと、さらに、自分を売り込むためのテクニックなんかを示唆する話です。具体的には、こんな内容です。

燕 (えん) の昭王が優れた人材を集めようと思い、郭隗 (かくかい) という在野の長老に知恵を借りようとしました。すると郭隗は王に、次のような話をしました。

『ある国王に駿馬を1000金で求めてこいと命ぜられた家来が、その馬を探し当ててたどり着くと、すでにその馬は死んでいたというのです。しかしこの家来は死んだ馬の骨を500金で買い取り、王にそのことを報告しました。王はこれを聞いて、欲しかったのは生きている馬だ、死んだ馬の骨などに金を払うとは何事かと立腹されたそうです。しかしこの家来は、「死んだ馬にも大金を払ったのです。生きた馬ならもっと金を払うだろうと、国中から駿馬が集まります」と答えたそうです。そして1年も経たないうちに、駿馬が3馬も集まってきたというのです』

そして郭隗は王にこう言いました。「優れた人材を求めるのなら、まずはこの私めからお初めになりなさい。こんな老いぼれの私を大事にする国王の元になら、もっと優れた賢者が集まることでしょう」と。

いやー、見事ですね。ある意味、優れた馬を死んでからも利用するという「こすからい」やり方ですが、その位のことをしないと人を集め、知を役立てることはできないのかも知れません。もちろん、リーダーとして心に留めておくべき話なのですが、これは一般の人にも言えることです。利用するという言い方をすれば少し気が引けますが、厳しい社会を生き抜いていくためには、こうしたしたたかさを備えておいても損はないでしょう。



果たして、次期米国大統領に選ばれたオバマ氏は、こうした人材集めでも手腕を発揮できるんでしょうか。これから次第に明らかになっていく人選が見ものですね。

それに引き換え、選ばれてはすぐに失脚するような大臣ばかりを登用する日本の首相たちは、とても人材を使いこなす能力はなさそうです。麻生さんも、2ちゃんねるでロムってばかりでなく漢字の読み方がちゃんとできるように「会話」を増やしたり、漫画ばかりでなく古典を読んだり (古典の漫画じゃなくてね)、そういう努力をした方がいいんじゃないでしょうか。

でも、最近漢字が書けなくなってきたので、あまり人のことを言える立場じゃないんですけどね。(爆)