松本サリン事件被害者の河野澄子さん死去に対する新聞3社の対応についてちょっと思う

14年間昏睡状態のまま、一度も意識が戻ることなく、ついに5日午前3時4分に河野澄子さんが亡くなられました。当時、勝手に家族を犯人扱いして報道したマスコミ各社は、第一報でそのことを小さく、小さく伝えました (テレビの方は知りませんが)。



朝日新聞と読売新聞は、速報に近い形で、オンライン版のトップ記事に載せていました。


朝日新聞 (2008年8月5日10時38分):

94年6月27日に長野県松本市で起きたオウム真理教による「松本サリン事件」で、意識不明の状態が続いていた河野澄子さんが5日午前3時4分、サリン中毒による低酸素脳症松本市内の病院で死去した。60歳だった。

読売新聞(2008年8月5日10時59分):

長野県警に入った情報によると、松本サリン事件の第1通報者・河野義行さんの妻澄子(すみこ)さん(60)が死亡した。

澄子さんは事件後、サリン中毒の後遺症で意識が戻らない状態にあった。

一方で、毎日新聞は速報をかなり遅れて掲載しましたが、オンライン版のトップ記事にすることなく、11時34分になってようやく少し詳しい内容をトップ記事として掲載しました。


毎日新聞 (掲載時間不明の速報)

94年6月に発生し、7人が死亡した「松本サリン事件」の被害者で、事件の第1通報者である河野(こうの)義行さん(58)=長野県松本市北深志、元県公安委員=の妻澄子(すみこ)さん(60)が5日午前3時4分、入院先の松本協立病院で、サリン中毒による低酸素脳症に伴う呼吸不全のため死亡した。

河野澄子さんの夫で事件の第1通報者の義行さんは、マスコミから犯人扱いされ、大変な苦労と悲しみに追いやられたことは、今更述べることもないでしょう。マスコミがいかに特ダネ狙いで慎重さを欠いているかが、世間に広く認識された事件でもありました。

そして今日、あれだけひどいことをしておいたマスコミは、河野澄子さんの訃報を小さく扱っており、その姿勢からはこれ以上自分たちの傷跡をさらさないようにしている感じさえ受けます。あれからも、多くの捏造が行われ、さらに奇しくも今日、読売新聞の記者が捏造をしていたと報じられています。マスコミは、やはり何も変わっていないようです。



各社とも詳しい記事を時間を置いて掲載していますが、唯一朝日新聞

「事件当初、義行さんが容疑者であるかのように伝える誤った報道が相次いだことから、メディアによる人権侵害として問題になった。」

と、当時の経緯を簡単に伝えています。しかし読売と毎日には、その簡単な説明すら見当たりません。いずれ別の記事で伝えることになるのでしょうが、自分たちのした誤りについて、触れたくないものは書かないという姿勢は、新聞社として許されるのでしょうか。

(ちなみに読売新聞の記者による捏造事件は、青森支局の男性記者が起こしたもので、読売新聞では青森版にだけお詫びを掲載したようです。朝日新聞はそのことを全国版で書いています。)



政治家や官僚の不祥事、警官による犯罪、学校の先生による暴力、医療関係者による医療ミスの隠蔽、年金や医療費にまつわる弱者切捨て、そしてマスコミによる捏造や都合の悪い記事を隠す姿勢。。。

無差別殺人や少年少女の犯罪が急増しているだけでなく、日本は腐敗しきってしまっているように見えます。こうした犯罪や道徳を逸した行為は、多くの場合、情報の操作によって行われているように思えます。都合の悪い情報を隠したり、都合のいい情報だけを見せたり、価値の高い情報をちらつかせて圧力をかけたり、人をだまして個人情報を入手したり悪用したり。。。

これからは、いかに適切な情報を入手し、正しく判断し、正しく利用し、悪用されないようにしていくかが、生き残れるかどうかに大きく影響すると思います。にも関わらず、マスコミや権威のある組織や団体からの情報を鵜呑みにする人が何と多いことか。もっと、情報の扱い方について、しかるべき啓発を行わなければならないのではないかと思います。

しかし、一番情報を操作しているであろう政治家やマスコミがそれを嫌う以上、自衛するしかないのでしょう。せめてそのことだけでも、もっと広く人々に理解してもらえたらと感じます。

21世紀になって、ますます嫌な世の中になりましたね。