年金の「海外カラ期間」

もう言い尽くされている感のある年金問題ですが、まだまだ分からないことってあるようです。年金加入期間として計算される「海外カラ期間」って言葉、聞いたことありますか? 大抵の人は知らないのではないでしょうか。



実は先日、区役所の年金課から電話があり、一度役所まで出向いて欲しいと言われました。正確には、その電話が掛かってきた時は留守だったので、家族の者が伝えてくれたのです。

はて、海外に出ている時は任意で加入する (=支払う) ことは可能でも、義務ではないはずだし、一時帰国においても、カナダ側で年金を払っているからと説明すると、それじゃ加入しなくても大丈夫だと言われているし、何のことだろうと思ったわけです。

一時帰国中、確か3週間以上日本に滞在する場合は、住民票を入れることが薦められます。今回は少し長くなるし、歯医者にも通うため、住民票を入れています。その時、役所の人にちゃんと正直にそうした事情を話しているのですが、それなら特に加入しなくてもいいと言われています。

でも、役所では、人によって言うことが違うことも (少なくとも過去20年において) 多々あったので、やっぱり払えという催促かなと思いました。

でも伝言をよく聞いてみると、海外にいる期間は「海外カラ期間」として加入期間に算入できるので、その手続きを取った方がいいよというお知らせだったようです (というか、どうして役所の方で処理してくれないのかもはなはだ疑問ですけどね)



現在の年金法では、年金加入者が60歳または65歳で年金を受け取るためには、最低300ヶ月間支払いをする必要があります。つまり25年間です。

で、経済的な事情などの特別な理由がある場合、そして、国外に転出していた期間なども、この25年間の支払い期間としてカウントできるんだそうです。

これは、ずーっと以前から (法律で) 決まっていることでした。でも、海外に居て支払いをしない場合、「25年間実際に支払っていなければ年金はもらえないぞ」と、どこの役所でも脅されてきました。役所の人間は、とにかく支払い実績だけが得られればいいとしか考えてなかったようで、
ちゃんとした説明なんかただの一度もしてもらったことがありません。
つまり、海外に出ている時も払わないなら、年金をやらないぞ、ということ以外、一切の説明をしてもらえなかったんです。



今回、宙に浮いた年金問題が騒がれているおかげで、こうしたケースについてもちゃんと調べるようになったのでしょうかね。つまり今のままでは、もらえるはずの年金が、あやうくもらえなくなるところだった訳ですが、手続きさえすればもらえる可能性がある訳ですよ。(海外転出期間外では、少しの間ですが国民年金や厚生年金を払っているので、その分を併せれば額は少なくとも年金を受け取る資格はあるそうです。知らなかったぁ。)

じゃあ、海外に転出していた期間は全部算入してもらえるのかと言うと、実はそう簡単な話ではなかったのです。



海外転出など、住民票の移動の記録は、実は5年ほどしか役所で保管されず、それ以前のものは削除されてしまうのです。すると、10年以上も前にアメリカに留学していた時の転出記録など、とっくに無くなってしまっている可能性が高いため、海外にいた事を証明できなくなる恐れがあります。

仮に生まれてからずっと同じ市区町村で暮らし、海外転出後も同じ市区町村にいるのなら、その記録が「手書きで」残っている可能性はあります。でも、別の市区町村に転出・転入などをしていると、その記録は分散されてしまい、見つけるのが困難です。

でも、戸籍には過去の住民票の記録が附表として残るそうで、それを追いかければ記録が分かる可能性もあります。でもね、これも注意しないといけないんです。



まず今回、区役所の年金課でこうした説明を受けたのですが、必要な附表は自分で別の課に行って取得しなくてはならない。このとき、年金課の人は、「すべての附表」をもらうように書いたメモをわざわざ渡してくれました。そしてそれを持って戸籍係の方に行ったのですが、そこで渡されたのはコンピュータ化された過去5年分だけの附表でした。

よく分からないので、とりあえずそれを持って年金課に戻ると、その人は親切にパソコンでチェックしてくれ、もっと過去の記録があるはずだと、一緒に戸籍係のところへ行ってくれました。

年金課の人は、「手書きの古い附表を出して欲しい」と戸籍係に説明し、それでようやく10年前からカナダに転出していることが証明されたんです。もしこの人が親切にしてくれなかったら、その証明はあやうくできなくなるところでした (役人にもいい人はいるものです)。

しかし、問題はそれだけじゃありませんでした。



実は結婚を機に戸籍も移動しているため、以前の戸籍のある市区町村で附表が残っているかどうかは、現在の市区町村の役場では分からないのです。
調べてもくれません
(何のための住基ネットだよ!)。なので、自分でそこに問い合わせるしかないと言われました。

まあ、他の役所ではお目にかかったことのない程親切にしてくれたその人が言うんだから、そうなんでしょう。ここで怒ったところで、どうにもならないんでしょうし。

ただ、これって結構大変でした。すぐ近くならいいのですが、かなり遠方にあるので、そこへ行くのは大変な時間とお金がかかります。もちろん、平日の日中しか対応してくれず、しかも附表が残っているかどうかも分からないのです (電話で問い合わせは可能らしいですが、果たしてちゃんと調べてくれるか大いに疑問ですし)。

その古い戸籍に残っているかも知れない過去の海外転出記録は約4年半分。結構大きいですね。でも、それは15年から20年ほど過去のものです。恐らく残ってないでしょう (まだ確認してないので、わずかに可能性はありますが)。

さらに運が悪いことに、元の戸籍があったところは、過去に実際に住んでいたところではなく、父親の実家の住所だったんです。そうなると、住民票の移動がきちんと戸籍に残っているのかどうか、さらに怪しくなります。。。

こうなると、本来なら65歳で (額の大小はともかく) 年金をもらえるはずだとしても、その受け取りを申請する役場では、「(カラ期間を含めた) 支払い期間が25年に足りている証明がないから年金はあげないよ」と言われかねません。それって、ちょっとひどいですよね。



じゃあ、まったく望みはないかというと、外務省の渡航記録を提出すれば大丈夫「だろう」とのことでした。でも、これはあくまで年金をもらうための手続きをする65歳 (人によっては60歳) の時であって、
支払い期間中は渡航記録で対応してくれない
そうです。。。しかも、その時の法律がどうなっているかによるので、現時点でその方法が確実に認められるかどうかは分からないとか。

どうして役所って、融通がきかないんだろう。思い切り役所の縦割りの弊害を国民が被っているんじゃん!



まあ、もともと日本の年金はもらえないだろと思っていたので、気分的には「やっぱりな」という程度の憤りしか感じませんが、もっとひどいケースの人も沢山いるんでしょうね。そりゃ、国民が怒るわけです。これから年金記録の通知が来るようなことらしいですが、まずまともな対応は期待できないでしょうね。(年金の通知で問題があった場合に電話する場合、その電話番号は「有料」なので自己負担で掛けなければならないし。)

それなのに、こうした問題を起こした張本人の政治家、特に与党の連中は、「もうしゃーない」とか「自分達も役人に騙された」とか言うだけで、謝ろうともしない。いったいどういう神経をしてるんでしょうか。



昨夜「太田光の私が総理大臣になったら・・・秘書田中。」という番組でちょうど宙に浮いた年金問題を取り上げていましたが、坂口元厚生労働大臣なんて、なんて人をバカにしたような口の利き方をするんだろうと呆れてしまいました。この人、数少ないまともな政治家だと思ってたんですが、見損ないました。他の自民党議員も同じです。

坂口元厚生労働大臣側についた人達からは、
「国民がバカだ」
とか、
「政府を信用しすぎるのが悪い」
とか、信じられないような発言が相次ぎました。こんな人達が国政を担っているなんて。。。正直、この人たちはきっといい死に方しないだろうなと、いや、して欲しくないとさえ、本気で思いましたよ。というか、そのうち刺されるんじゃないかと、少し心配になったくらいです。



嗚呼、日本の政治も政府も官僚も政治家も、ここまでひどいとは思わなかった。日本に戻ってきて、こうした事実を目の当たりにして、やっぱりカナダで暮らしていこうって強く思いました (逃げ場のない人からは文句を言われそうですけど)

もう、日本政府には期待も、信頼も寄せないことにします。どうせ国民を見捨てるような政府なんだから、何の解決策も見出せない内閣なんだから、信じるのが悪いなんて言う政治家がいるんだから、誰が信用しますかって!



わずか10年カナダに居る間に、日本はなんて情けない国になってしまったんだろう。年金のことに限らないですが、これだけ騒がれていてもちゃんと説明さえしてくれない政治家や役所の言葉を信じず、自分でよーく確認することが、これからの生死を分けるかも知れませんよ。皆さんも、気をつけましょう。もう一度よく、自分の年金について、若い人でもちゃんと確かめることをお勧めします