自分の立場でしか考えられない人たち

どうしても通ってほしい

福田首相が補給支援特別措置法案 (特措法) について、こう言ったそうですね。。。


子供じゃないんだから、ダダこねないでくださいよ!

(僕ちゃん政権だった安倍さんと変わらないじゃん! 「美しい貢献」とでも言いたいんですか?)



国民の多くが反対しようが国会で法案が通らなかろうが、どんな手を使ってでも可決させてやるっていうのは、日本国民を代表する民主国家の首相として失格でしょう。まあ、どこの国でも、トップになると平気で好き勝手なことをやるようですが、福田さんのやろうとしていることは、レベルが低すぎます。    (ダダこねるなんてね)

それに、額賀財務相に対する疑惑についても、安倍さんの時ほどじゃないけどかばい続けてますよね。これだけ疑惑が出ているのに、証人喚問させないなんて。「証人喚問はとても重い。いいかげんなことはできない」(朝日新聞より) とか言っているようですが、いい加減であやふやにしてしまおうとしてるのは、むしろ福田さんじゃないでしょうか。何も後ろめたいことがないなら、堂々と証人喚問させればいいのに。

どうやら安倍政権の末期症状と大分似てきましたね。頼みのブッシュ大統領ももうすぐ任期切れでアテにできないし、政権発足後の成果もほとんどゼロという状態だし (何か法案通りましたっけ?)、なりふり構わない状態かな。周りが見えなくなっていて、自分の立場でしか物事を考えなくなっているんでしょうね。



ところで、もう何年も前のことですが、「世界のテレビ事情」とかいう企画モノのアンケート調査への協力を頼まれて、カナダのテレビについて聞かれたことがあります。

アメリカとかカナダとか、日本人にとっては (距離的には遠くても) 文化的に割と身近に感じる国の場合、すでにたくさんの人が行き来していることもあって、だいたいのことは知っていると思いがちですね (少なくともアンケートを依頼してきた人はそうでした)。

確かに、アメリカのテレビ事情は、映画やドラマの中でもある程度分かりますし、アメリカで暮らしたことのある人が知り合いにいることも珍しくないので、だいたいの見当はつきますね。だからカナダも似たようなものだと思ったのでしょう。

でも、カナダのテレビは、アメリカのテレビとは決定的に違うことがいくつかあります。形式的には、アメリカに国営放送というのはなく (政府にべったりの局はありますが)、全国放送を行っている複数の有力局があります。

これに対してカナダでは、全国放送を行っているのはカナダ国営放送 (CBC) のみです。

(まあ、この弊害についてはいろいろあると思うのですが、それはまた別の機会に。)



そういう形式的な事ではない部分でも、両国では大きな違いがあります。それは、カナダが英語とフランス語の両方を公用語としており、例えば首相や国会議員は演説や記者会見の席で英語とフランス語を混ぜてしゃべるため、テレビでは同時通訳が常にスタンバイしているという点です (番組の内容によりますが)。

つまり、首相が演説をする場合、スピーチの途中まで英語でしゃべったかと思うと、その続きはいきなりフランス語になります。そしてまた突然英語で続きを述べます。

記者会見でも、記者からの質問が英語の場合は英語で答え、質問がフランス語であれば、答えもフランス語になります。首相だけでなく、中央政府の有力政治家はだいたいこういう芸当ができるようです。

テレビ局には英語放送局とフランス語放送局がそれぞれ別にあり、英語放送局では、出演者 (というか発言者) がフランス語でしゃべっている場合に英語同時通訳が入ります。フランス語放送局はその逆でしょうね (こちらは観てないのでよく分かりませんが)。

つまり、突然フランス語で話をされても、英語の視聴者が理解できるように通訳を入れられる体制を整えているんです。



でも、こんなこと、日本では考えられないでしょ? だからこの事をアンケートで書いてあげたのに、「ああ、一旦英語で言ったことをフランス語で言い直すんですね」とか返事してきたんですよ。
どうせそんなことでしょ
って感じで。

あの、カナダ人 (というか住民) がそんなに暇だと思いますか? そんなことしてたら、すべての事を2回言わなくちゃならず、すべての事に2倍時間がかかる訳です。白熱した議論をしていても、冷静に2回繰り返して発言しなくちゃならない。相手も、即座に言い返す前に、英語とフランス語で繰り返された後でないと反論できない。

そんなバカなこと、ある訳ないじゃないですか。 カナダの住人をバカにしないでくださいよ。ちょっと考えれば分かることなのに。     (つまりちょっとさえ考える事もしなかったって事)



こういう事を平気で言うのは、同時通訳なんてめったにない日本での環境をそのまま当然のこととしてカナダに当てはめようとしているからなんです。ついでに言うと、こちらの言うことを信用せず、自分の価値観と違っているからどうせ適当なことを言っているんだろうって見下している証拠ですよ。実際、この返事が来たときには、ちょっとムッとしましたよ。バカにされたようで。    (こっちは時間割いてボランティアで答えてあげているのに)

カナダは英語とフランス語のバイリンガル教育がものすごく優れていて、両方の言葉をペラペラに話せる人も少なくありません。その中から流暢な同時通訳者がたくさん生まれてきても、全然不思議じゃないんですよ。だいたい、移民の多い国だから、自国語と英語またはフランス語のバイリンガルもかなり多い訳だし。

そういう環境だから、テレビに同時通訳者がスタンバイしていることも当たり前なんです。初めから、単一の言葉でしか放送しないなんて考えがないんですよ。



まあ、ちょっとムキムキ書いてしまいましたが、要するに自分の立場でしか考えられない人は相手に対して失礼だったり、わがままだったり、傷つけてしまうことさえあるということなんです。

例えば、子供の気持ちや立場が分からない教育者は、自殺者が出るまで子供の変化に気づかなかったり、いじめ事件の後でも「そんな様子はなかった」と、反省するどころか保身とさえ思えるような発言をする。これも、自分の立場でしか物事を考えない人の典型的な振る舞いですよ。

そして福田さん。ブッシュ大統領に給油活動の再開を約束しちゃったからとか、国連で支持されていないのに高い国際的な評価を得ているとか、国民の多くが反対していることには一切触れないまま野党が石頭でどうしようもないとか言って、自分の立場でしか物事を考えてない。少なくとも、そうとしか見えない言動を平気でしている。一国の首相が、国民を置き去りにしている訳です。

ちなみに「福田内閣メールマガジン」の第2号 (2007/10/18) には、こんなことが書いてあります。
(「首相官邸ホームページ」内のメルマガ2号のページ)

海上自衛隊が補給している相手国は米国だけではありません。フランスやドイツのほか、イスラム国であるパキスタンの艦船も、インド洋での「テロとの闘い」に参加しており、現在では、米国よりもその他の国の艦船へ補給する量がはるかに上回っています。その結果、この活動は、米国だけでなく世界各国から高く評価されています。

(「福田内閣メールマガジン」第2号より引用)


んー、この中の「世界各国から」っていうのは、燃料をただで分けてあげている当事国だけでしょ。それ以外の国連加盟国の多くは、むしろ反対してますよね。国連の活動としては認められていないんだし、どうしてこういう
詭弁
を使うんでしょうか?

はっきりと、どことどことどこは評価していると明言すれば、まだ誠意ある感じがするけど、これまでの説明で一度もアメリカ以外の (評価しているとする) 国名を挙げたことはないでしょ。それが国民の目にはどう映っているのかなんて考えず、

「何のために、どのような活動を行っているか」、「なぜ継続が必要なのか」について、何度でも丁寧にご説明し、皆さんのご理解を得るよう努力していきたいと思います

(「福田内閣メールマガジン」第2号より引用)


とか書いておきながら、同じ台詞を繰り返すだけ。全然丁寧でもないし、理解を得る努力もしてない。ただ、ダダをこねているとしか映りませんね。「俺の立場も考えてくれよ」って感じにしか見えない。これじゃ、国民が付いてくる訳ないでしょうに。そういうところが、全然分かってないんですよね、日本の政治家は。



この分だと、安倍さんの時のように福田さんも途中で政権投げ出したりするかも知れませんね。ま、今回はさすがに周りがそうはさせないだろうけど、本人はもうやる気がないんじゃないでしょうか。特措法が通らなかったら、どういう行動に出るのか (もう嫌になってやけっぱちで解散するとか)、ちょっと見ものですよ。

でも、そんなことされると、また日本経済が混乱してしまう。円が弱くなったりして、それで困る人も出てくる。そういう立場の人のことも、どうでもいいんだろうなぁ。