プログラマは面白い人が多そうだけど、翻訳者って堅いなぁ

はてなを利用している方はご存知だと思いますが、ブログを書いてアップした後にログアウトすると、はてなダイアリー (=はてなのブログ) のトップページに飛ばされます。そこには「人気の記事」とか「注目の記事」というものが幾つかあって、タイトルだけで結構笑えたりします。

ここで紹介されている記事は、ブクマの数を1つの目安にしているので (詳しいことは知りませんが)、やはり人気のある面白い記事が多いようです。

で、昨日の記事を書いた後にそのトップページに飛ばされたのですが、その時の人気の記事に「理系の女の子の取扱説明書」というものがありました。

  ■理系の女の子の取扱説明書

これ、男性が女性のことを書いているのではなくて、理系女子のブロガーが書いているものです。あまりに長いので最初の方しか目を通してませんが (すみません _( )_)、自虐的なところもあり、納得するところもあり、くすくす笑いながら読ませてもらいました。

で、同じ人気の記事の欄には、「体育会系の女の子の取扱説明書」というものもありました。

  ■体育会系の女の子の取扱説明書

実はこちらも女性の方が書いているもので、「理系の女の子の取扱説明書」を読んだ上で書かれた内容です。これも面白く読ませていただきました。



しかーし、もっと笑えたのは、注目の記事として紹介されている「プログラマ男子取扱説明書」というものです。こちらは男性の方によるパロディー版なのですが、内容は面白おかしく書かれているだけでなく、本質を突いているというか、結構するどいものがあります。

  ■プログラマ男子取扱説明書

プログラマの知り合いは何人かいるのですが、やはりある程度括弧でくくれるタイプの人が多いようです。冗談なんかも、真面目な顔をしたまま、普段の調子ですぅーっと入れてくることがあるので、油断していると怪我しそうになることもあります。



ま、プログラマになる人っていうのは、少なくとも頭のいい人です。学校の勉強ができたとか、いい成績を取っていたとか、そういうことではなくて、考え方がロジカルなんです。でも、無駄にロジカルなところがあったり、無駄を必要とするところであまりにロジカルだったり、時々バランスを失うこともあるよう気もします。    (バカにしてる訳じゃないですよ。プログラマの皆さんごめんなさいごめんなさい。)

何が言いたいかというと、よく分からなくなってきたのですが、(たぶん) プログラマの人のブログは概して面白いってことです (もの凄くロジカルでない流れですみません)

それは、どんな人がどういう風にブログを読み、感じ、反応するかを、ロジカルに考えながら、あたかもプログラミングをするように文章を書いているからだと思います。常に、入力 (ブログを書くこととか) と出力 (アップしたブログを読まれることとか) を考えた行動を追求しているのかなって、ちょっと思ったりします。

いやー、やっぱりプログラマは面白いですよ。



それに比べて翻訳者なんて、
かなり偏屈
です。プログラマよりも議論好きで、ものすごく頑固というか、融通が利かない。新しいものへの挑戦は好きですが、自分の奥にしまってある、何か本質的な考え方の塊というか、信念というか、そういうものは絶対に崩さないんですよ。はい、自分でよく分かってます。それが一番、翻訳者がもっと柔軟にならなくちゃいけない部分だなってことも。

ただ、世間から見た、一般的なイメージは、実はプログラマと翻訳者では逆かも知れませんね。プログラマはちょっと Geek な感じがして堅物。翻訳者は、んー、どうなんだろう。身近にいないから良く分からないけど、文系っぽいから柔らかそう。こんな感じでしょうかね。

でも、本当は逆ですよ、逆。プログラマは実は文系出身の方も多いし、翻訳者は理系出身も多い (その一人だったりしますし)。まあ、技術系の文書なんて、プログラマが翻訳していることもあるので境目がはっきりしないこともあるんですが、それ以外の領域では、結構イメージとは違う場合が多いと思います。



さてそうなると、「男子翻訳者の取扱説明書」なんてものを書いたら面白いのかなと思ったりもしますが、世間ではあまり関心がないでしょうね。プログラマっていうのが、最近は割と身近な存在になりつつあるのに対して、翻訳者ってのはまだよく分からない職業って感じでしょうから。

そういう意味では、本来は (男女関係なく)「翻訳者の取扱説明書」があった方がいいのかも知れませんが、あったとしても、実際にはそんなモノを見るよりは
「関わらないようにしておこう」
と思うでしょう。絶対数も少ないし、知り合いにならなくても困らないし (というか、面倒そうだからいらない?)

んー、これはつまり、プログラマっていうのは、翻訳者よりも人気があるってことでしょうね (← もっと早く気づけ!)。例え文章の中に句読点がなかったり (あっても日本語の句読点でなくてピリオドやカンマだったりする)、めちゃくちゃ甘いものが大好きで糖尿の気があったり、人の話を聞いてくれるのはいいんだけど冷静に分析されてそうでちょっとおどおど話さないといけないことがあったとしても、プログラマは許容範囲内の面白さをキープできてるんです。

一方の翻訳者は、プログラマと同じように、忙しいと何日も外に出ない日があったり、考え事をしている時は怖いくらい置物のような状態になっていたり、パソコンの前で何時間も平気で作業していられる所があっても、プログラマとはまた違う堅い感じがあるんです。この違いは何でしょうか?



昔、プログラマ出身の女性翻訳者 (元同僚) が言ってました。プログラマは「いかに美しいコードを書くか」に命をかけてるって (命をかけるってのはちょっとオーバーだろうけど)。つまり、無駄がなく、汎用性の高い、高度な技術を駆使したプログラミング・コードを書くために、日夜努力を続けているんですよ、プログラマの方たちは。    (あっぱれ)

それに比べて翻訳者は、読み手が理解しやすいか、いかにも訳したという感じが出ないような自然な文章か (=日本語、英語、その他すべての言語において、その言語での自然な表現かどうか)、原文に間違いや (翻訳される言語の国では理解が難しいような) 説明不足の部分をいかにカバーできるかなど、自然さのために無駄を取り入れ、読者層に特化した (つまり読者に媚びた) 汎用性の低い文章を書き、技術よりも経験や勘で仕事を進めるわけです。プログラマとは、かなり違うというか逆の部分があるんですよ。

例えば、このブログを読まれている方はよく分かると思いますが、翻訳者の文章って長いでしょ (← 人によるだろうけど)。延々と続く感じで、要点だけポンっと書けない (もちろん書ける人もいますよ)。その点プログラマは要点重視だし、例え文章が長くなっても、ちゃんと項目を分けて分かりやすくしている。何でも思いついたことを詰め込もうとする翻訳者と違って、最初から整理整頓された文章を書くつもりでいる訳ですよ。   (偉いなぁ。)



そういう違いは、プログラマと翻訳者との間における、世間受けの違いとして現れてくるのかも知れませんね。でも、何か損してる感じだなぁ。翻訳者の方が読者に媚びて文章書いているのにぃ。

見た目は同じような仕事のスタイルなのに、実はこんなに違うなんて。。。だいたい世間様は、翻訳者なんてのは、人が書いたものを書き換えるだけの、創造性の低い職業だって思ってるんでしょう? (落ち着け、怒るなよ)  単に複数の言語を知っているだけじゃん、って感じで。 (だから切れるなって)

でも、プロの翻訳者ってのは、かなり厳しいノルマがあるんですよ。文章のスタイル*1、指定された用語の使用*2、きっつい締め切り、理不尽なクライアントからの注文、高価な翻訳ツールの自腹購入、などなど、様々な制約の中で最高の文章を書くという特殊能力が要求されます (それだけですけど)。特にクライアントが、内容は正しいのに「この文体が気に入らない」とかケチをつけてくることもあるので、自分のやり方を通すことはできません。そういう、どうしても読者 (クライアントを含む) に媚びた文章を書かなければお金をもらえない、結構可哀想な職業なんですよ (下請けの中でも一番最低の位置にいますから)

しかも、プログラミングは間違っていればテストやデバッグなどでそれを知ることや修正することもできますよね。でも、翻訳の場合はそうはいかない。正確さを維持するには、翻訳者、編集者 (= 見直し作業をする人)、校正者 (= 原文は見ずに翻訳された文が滑らかで間違いないかをチェックする人) がそれぞれに細心の注意を払うことで防ぐしかないわけです。間違っていた場合、当然おとがめは翻訳者にきます。。。   (当然なんですけどね)



まあ、そんな訳で、翻訳者はセンスのある冗談を言ったり、面白い文章を書く余裕がないんですよ。びくびくしながら書いているんですから (あ、ここでは言いたい放題ですけどね)。

そんな哀しい翻訳者のことを、みなさん少しは暖かい目で見てやってください。取扱説明書がなくても、何とか使えるものですから。   (たぶん)

*1:注:「です・ます」調か「だ・である」調かや、半角と全角の区切り、長音記号の有無、送り仮名の付け方、GUI のメニュー名などを括弧で括るか、などなど

*2:注:社名は原語か日本語か、製品名やサービスの表記方法、following を「次の」と訳すか「以下の」と訳すか、などなど