ゴア元米副大統領のノーベル平和賞受賞が意味するもの

ちょっと意外でした。この人、地球温暖化の問題に警鐘を鳴らし、献身的な活動をしているのは認めますし、偉いと思います。ノーベル賞受賞もいいと思います。でも、わずか数年の活動でノーベル賞をもらうのは、ちょっと早いような気もします。

過去にノーベル平和賞を受けた方たちは、20年とか30年とかの長い活動を評価されて受賞したケースが多いと思いますが、それに比べるとゴア氏の場合は異例とも思えます。でも、それにはやはり意味があるのでしょう。



2000年の大統領選で、弟が知事を勤めるフロリダ州での開票結果の結論を急がせて (獲得票数が本当はゴア氏の方が上だったのに) 強引に大統領の椅子を手にしたブッシュ氏が放置し、京都議定書も無視したために悪化したこの問題に、敗れたゴア氏が取り組んでノーベル平和賞を受けることは、政治的な意味合いも感じます。

でも、それ以上に、ノーベル賞選考委員会が地球温暖化への早急な取り組みを全人類に対して促す意味で、ゴア氏を選んだのではないでしょうか?



地球温暖化の問題は、待ったなしの危機です。実際、世界各国で異常気象による災害がたくさん起きています。単なる気温の変化だけでなく、台風やハリケーンなどを含む気象システムが異変を起こし、洪水や南極の氷の減少、環境汚染など、手のつけようがない現象が続いています。このままいけば、地球規模で生態系が崩れてしまうことは確実です。

誰が悪いのか? それは、誰か一人だけの責任ではなく、ブッシュの政策や、温暖化ガスを大量に出しながら対策を怠っている中国、先進国よりも融通しろと工業化を優先する途上国、そしてもちろん、先進国でのエネルギーの無駄遣いのすべてが原因になっています。その中でも、私利私欲のためにブッシュが行ってきた政策が間違っていることは、誰の目にも明らかです。

ハリケーンでの大被害を受け、国内からも批判が相次ぎ、それでも京都議定書などには経済負担が大きいからと反対し、アメリカに有利な Post Kyoto 政策で事を有利に運ぼうとするブッシュ。こういう姿を見て育ったアメリカの子供たちは、何を考えるんでしょうか。



こうした危機感が、ノーベル賞選考委員会の人たちにもあるのでしょう。影響力は絶大です。ゴア氏が平和賞を受けることで地球温暖化対策にもっと真剣に取り組むよう、意図されていたんではないでしょうか。

ノーベル賞も、所詮は人間が選ぶ賞です。その裏側には、いろいろな駆け引きがあるようです。だからこそ、受賞した人と受賞理由をよく考えることは、違う意味で世界市民の世論を知ることにつながるのかも知れません。



受賞されたゴア氏には、素直におめでとうございますと言いたいです。そして、ブッシュ氏や、次の大統領の椅子を狙っている候補者の方たちには、その意味をよく考えてもらいたいものです。