脳障害患者には早くから声掛けやマッサージが重要

2日前、うちのすぐ目の前の交差点で自動車同士の衝突事故がありました。急ブレーキの音がしたかと思うと、「ガシャッ」という大きな音。2分も経たないうちに救急車が駆けつけました。

うちの前の左右にある交差点では、毎年合わせて10回前後の交通事故があります。バンが横倒しになるような激しい衝突事故もあれば、渋滞の中でちょっと当たったという程度のものまでいろいろですが、人が轢かれたこともあります。実際轢かれそうになったことも何度かあり、交差点を渡る時にはかなり気をつけています。

そうした交通事故に遭って、右脳が完全に機能しなくなった方の話を先日聞きました。ひどい怪我なので植物状態か、意識が戻っても半身麻痺などの後遺症が残ると担当医に見離されていたのですが、高名な脳外科の先生がこの話を聞いて「騙されたと思って、意識がなくても手をさすったり、呼びかけたりしてみてください」と家族に助言したそうです。担当医らは「そんなことをしたって無駄ですよ」と取り合わなかったそうですが、家族は声をかけ、手をさすり、一生懸命に看病したそうです。

普通、日本では意識のない患者に対して、あまり音を立てず静かな環境で安静にさせておくようにと言われますが、実はこの時に脳への刺激を与えることが大切なんだそうです。これが患者の回復に決定的な要素となります。

先ほどの患者の話を戻すと、怪我がある程度直ったとき、家族の方は彼の意識がまだ完全に戻らないうちから無理やり歩かせるリハビリを始めたそうです。もちろん本人は何もできない状態なので、抱きかかえるようにして歩いたり、手をさすったり、声をかけてやったりしたそうです。

すると驚いたことに、3ヶ月ほどで意識が戻り、さらに数ヶ月で身体が動くようになったそうです。そして、右脳がつかさどっているはずの左半身が徐々に動くようになってきたそうです。さらにリハビリを続けると、医者があり得ないというくらいに普通の生活ができるようになったそうです。

でも話はここで終わりません。その人はまだ10代だったのですが、高校に奇跡的に戻ったとき、学校の先生に言われたそうです。「君は右脳がないんだってね。ここは進学校だから、無理しなくてもいいだよ」というようなことを。

彼はこの心無いたった一言で、左半身麻痺の状態になってしまったそうです。

それを知った先ほどの高名な脳外科の先生は、彼に直接会い、どれだけ彼のことを周りが必要としているか、希望をもつことが大切かを懇々と説いたそうです。すると彼は、また3ヶ月ほどで元のように普通の生活に戻ることができたのです。

脳は計り知れない能力を持っています。右脳がダメになっても、左脳でカバーでするだけの柔軟性があり、様々な刺激を通じて発達していきます。逆に言うと、刺激がなくなれば脳細胞はどんどん死んでいきます。また、心の持ち方によって、能力が飛躍的に伸びたり、逆にできるはずのものがダメになったりもします。そういう繊細さも持ち合わせているわけですね。

事故にあって昏睡状態になった人が身近にいるのなら、意識のないうちから話し掛けてやり、手や足をさすって脳への刺激を毎日毎日諦めずに繰り返す必要があります。例え医者に見捨てられてもです。北米では、意識のない入院患者に看護婦がしつこいほど声をかけ、頬を叩いたりして刺激を与え続けます。そうすることで、患者の脳への刺激を途切れさせないようにしているのです。

交通事故などで大怪我をするような災難は、いつどこで誰に降りかかるかも知れません。そんなとき、諦めずに、意識のないうちからできるだけ早く刺激を与えるようにしてみてください。いつか役に立つことがあるかも知れませんので、頭のどこかで覚えておいてもらえればと思います。