キリスト教徒に政教分離はあり得ない?

えーと、カナダは移民の国です。お隣のアメリカの場合、移民の国ということでは似たようなものですが、アメリカは「人種のるつぼ」と言われるように、どちらかとういうと様々な国の文化などをごちゃまぜにして、新しく国家や文化を形成しています。でもカナダはちょっと違います。

カナダの場合、各国から入ってきた移住者がそれぞれの文化をそのまま維持し、他の移住者の文化と融合するのではなくて「融和」または「協調」していくというものです。まあ、お隣は違う考えの人だけど、お互いに認め合って仲良くやりましょうというものです。

で、当然ながら宗教なんかもいろいろです。もちろん、信仰の自由が認められていますし、政治に特定の宗教を持ち込むことはご法度です。が、実際には違うようです。

まず、いくつかの国の法定休日がキリスト教にちなんで決められていることが挙げられます。クリスマスやサンクスギビング、グッド・フライデーなんかがそうです。アメリカではこの他、正式な国の休日 (銀行とか郵便局がお休みの日) ではないですが、バレンタインズ・デー、聖パトリック・デー、イースターハロウィーンなんかが休日とされています。どうひいき目に見ても、完璧にキリスト教支配のカレンダーですよね。

もうちょっとアメリカのことを挙げると、ブッシュ大統領が演説のたびに「神のご加護を」と言っています。言うまでもなく、キリスト教の神、イエス様によるご加護を意味する言葉です。それから、どこかの連邦政府の建物には、キリスト教にまつわる銅像だか記念碑が立っています。政教分離を理由に取り払うべきだとの批判も強いのですが、頑として動かそうとしません。

何だ、カレンダーなんかを見る限り、カナダはアメリカに比べたら可愛いもんじゃないか。そう思うかも知れませんが、どっこいもっとすごいのがカナダにあるんです。

カナダは10の州と3つの準州で構成されています。そのうち東部の4州をまとめて「マリタイム」と呼ぶのですが、マリタイムの1つノバ・スコシア州では、州最高裁判所が「日曜ショッピング禁止法」を無効とし、特に大型店では日曜日の営業を許可するように州政府に求める判決を10月4日に言い渡しました。はい、それまでノバ・スコシア州では、日曜日に買い物ができなかったんです。正確には、店を開けてはいけなかった。

何故? それはもちろん、日曜日はキリスト教の「安息日」だから、お店で働くなんてもってのほかだからです。。。

「はっ?」という感じの「法律」ですが、実は昔は他の州でも一般的に見られた法律です。ここバンクーバーも例外ではなかったみたいだし。また、同じくマリタイムの1つで、赤毛のアンで有名なプリンス・エドワード・アイランド (PEI) 州は、現在も日曜ショッピング禁止法が有効です (クリスマス・シーズンは例外だそうです)。

で、ノバ・スコシア州州最高裁判所の決定により州民はみんなめでたく日曜の買い物を楽しめるようになったかと言うと、それが簡単ではないんですね。何せこの決定に対して、州民の半数が異議を唱えているからです。自分は開けるつもりはない。だけど、ライバルの店が開けられたら困る。止めさせるべきだ、という理由です。。。

とは言え、州政府は特別抗告などを行わないと明言し、今週末からの日曜ショッピングの解禁が決定しました。

んー、北米ではいかにキリスト教至上主義が横行しているかという、非常に分かりやすい事例ですね。元々はイギリスとフランスの植民地だったカナダ (アメリカはイギリスだけの植民地でしたが) は、最初に入植したのがキリスト教を信仰する人々だった訳です。だから「この地の伝統」としてキリスト教を守ろうとしているんですね。他の人はお構いなし。そうしたことが、アメリカ対イスラム諸国の対立を生み出し、巻き込まれたカナダ兵が自爆テロで犠牲になったりしている訳です。イスラムから見たら、カナダも似たようなものとしか映らないでしょうし。

まあそういった訳で、カナダもアメリカも意外と閉鎖的なところがあるので、国の政策などには気をつけていないなとえらい目に遭うかも知れません。海外に住むというのは、見た目よりもいろいろと大変なんですよ。