北米で多発する学校での乱射事件についてちょっと思う

昨日10月2日 (現地時間)、ペンシルベニア州の学校で乱射事件がありました。犯人は、静かに暮らしているミッション系 (アーミッシュ) の子供たちを襲い、女児3人を射殺しました。他に職員の方も死亡したようです。

この事件は、9月13日 (現地時間) にカナダのモントリオールにある Dawson College で25歳の男が銃を乱射して女子学生1人が亡くなった事件から数えて、3件目の学校での銃乱射事件です。わずか3週間も経たない間に、北米で4件の乱射事件が立て続けに起きたことになります。

ご存知のように、アメリカでは一般の人が銃を持てます。州によっては禁止されている所もあるようですが、基本的には許可証さえあれば誰でも銃を購入できます。スーパーなどでは、銃の弾丸がごく普通に売られていたりします。(最近は規制が厳しくなりつつあるようですが。)

アメリカの影響もあり、カナダでは個人による銃の所持は認められていないにも関わらず、かなりの人が銃を持っています。バンクーバーでは昨年、白昼にダウンタウンで発砲事件があったり、市内各地で銃撃が絡む事件が起きています。

バンクーバー警察では、個人で銃を所持している場合、これまでの不法所持については罪を問わないので警察に申し出て所有権を放棄して欲しいと呼びかけています。昨年だったか、この呼びかけに対して (たしか) 5000丁を越える銃が集まったとか。それだけの人が銃を持っていたわけです。今年も呼びかけを続けていますが、恐らく同程度の銃が集まるのではないかと予想されています。

ただ、銃を持っているから犯罪を犯すという訳ではありません。人の命を軽く見ている人が多いのです。

日本と違い、アメリカもカナダも軍隊があり、自衛隊と違って前線で敵と戦っています。毎日のように米兵がイラクアフガニスタンで死亡し、カナダでもアメリカ兵による誤射も含めて、何人もの兵士が亡くなっています。こういう人命が失われる状況に、特に若い人は慣れてしまったのかも知れません。

また、言い古された言葉になりつつありますが、過激なバイオレンス系のドラマやゲームが多く、暴力や殺人を「格好いい」と思う若者が増えていることにも問題があります。殺しても、またリセットできると本気で考えているのかも知れません。

北米では、テレビで暴力的な場面や言葉、または性描写がある番組に対しては、年齢制限が厳しく行われています。テレビでの映画放送では、コマーシャルが入った後にはしつこいくらいに毎回、そうした警告が画面に表示され、読み上げられます。また、そういう番組を子供が見られないように制限する装置なども普及しています。しかし、本当に効果があるのでしょうか?

視聴の規制や制限を行う前に、そういう内容の番組作成自体にメスを入れるべきだと思いますが、産業界の意向を立てて、規制は有名無実の状態です。こういうところに、頻繁に起きる銃乱射事件の原因の1つがあるのではないかと思います。

また、昨日カナダの番組で心理学者が述べていましたが、こういう学校での銃乱射事件が連続して起きるのは、Copycat (模倣者) 症候群のような心理が働くのではないかと推測されるそうです。つまり、誰かがやったことをすぐ真似する。独自性がなく、すごい事の真似することで、自分も有名になりたいと思う。そういう心理じゃないでしょうか。

日本でも、池田小学校事件を真似て奈良女児殺人事件が起きたりしました。もし日本が銃社会だったら、もっと被害も大きく、たくさんの模倣事件が起きていたかも知れません。日本でも、もう決して他人事の遠い国の事件ではなくなっています。

では何故こうした模倣犯が増えてきたのか? これは個人的な推測ですが、ネット普及が一因ではないでしょうか? いわば、ネット社会の副産物です。

掲示板やブログを見ると、むやみやたらに人を攻撃したり馬鹿にしたりする書き込みが溢れています。個人を特定しないネットの性質上*1、自分が実際に暴力や嫌がらせを受ける心配がないため、言いたい放題です。つまり、「安易に人を傷つける」ことに慣れてしまい、暴力が当たり前のゲームやドラマで血の気が多くなった若者 (だけでなくネット利用世代全般) が、ちょっと目立った事件を真似して注目されたいと思う。そんな心理が働いているのではないかと思います。

要するに、ネットへの依存度と暴力への慣れが、安易な考え方を生み、手っ取り早く人の真似をして世間を驚かし、有名人気取りになる。こういう流れは、もっと小さなレベルでは多くの人に当てはまるのかも知れません。ネットにどっぷりはまっている人なら、誰かがどこかに書いていたことを、さも「俺様がお前らに教えてやるんだ」という偉そうな態度で書き込んだり、人の書いたことに理由もなく批判をしたりしたことが少なからずあるのではないでしょうか?こういう人は、Copycat 予備軍かも知れません。

心理学はちゃんと学んだ訳ではないのですが、こういう心理状態は十分考えられる理由じゃないかと思います。つまり、ネットとの関わり方と、暴力が当たり前のゲームやドラマなどについてきちんと考えていかない限り、事態は悪化する一方ではないかと思うのです。試しにしばらくネットから離れて自然の中にいる時間を増やすと、随分穏やかになった自分に気がつくと思います。無邪気な子犬や子猫を眺めるだけでもいいかも知れません。

こうして考えると、ネットは正しく利用すればとても便利なものですが、子供にはあまり早くから使わせない方がいいのかも知れません。また、ゲームはネット対戦型がこれから主流になるようですが、間違った社会の繋がり方や接し方を、実際の社会に出て行く前の子供達がゲームで教え込まれてしまう心配はないでしょうか? ゲーム会社にも、お金を儲けることだけでなく、そういう部分の「責任」を考えてもらいたいものです。でも、ネットとゲームの申し子達が作っているゲームだから、やっぱり無理なのかな。きっと、いつかしっぺ返しがくると思います。

*1:その気になればネット上で個人を特定することは可能ですが、法律上簡単にはいきません。