5年前のあの日 -911-

その日は、日本から来ていた家族がサンフランシスコに向かう飛行機に乗るため、早くから支度をしていた。テレビのニュースを流しながら着替えたり顔を洗ったりしていると、臨時ニューズが始まった。ニューヨークのワールド・トレード・センターからもうもうと煙が立ち昇っている。音を小さくしていたので、始めは何のことだかわからなかったが、ただ事ではないことはすぐに分かった。やがて飛行機がビルにぶつかったことが分かった。

忙しさも忘れてしばしテレビの映像に見入っていたが、飛行機に乗り遅れるわけにはいかないので支度の続きを始めた。今日これから飛行機に乗るのは、実はカミサンとその家族で、こちらは空港までの見送りだ。3人もいっぺんい来たので寝る場所がないため、気を利かせて一人でゲストルームに泊まっていた。そろそろ部屋に戻って朝食を一緒に摂ろうと思いながらもう一度テレビを見る。すると、二機目の飛行機がビルに飛び込んできた。

慌てて部屋に上がると、何も知らずに平和に食事の支度をしているではないか。事の次第を話してニュースをつけると、米政府が非常事態宣言を発して、この惨事がテロ攻撃だったことを伝えていた。同時に、米国発着の飛行機をすべて禁止するというテロップも流れた。つまり、これからサンフランシスコには行けないということだ。

すぐさま空港のサイトにアクセスして状況を確認すると、米国行きどころかバンクーバー国際空港の全便が運行中止になっていると書いてある。もちろん旅行はキャンセルだ。

このまま空港に行ってもどうにもならないので、9時になるのを待って航空券を買った旅行代理店に出向き、対応を聞いた。すると、今回は特別の事態なので、オプションの米国内でのアトラクションも含めて全額返金されるとのこと。ありがたいと思いつつ、すぐに今夜からの宿をどうするかについて考えていた。まあ、いざとなればうちで全員ごろ寝でもすればいいが、できればちゃんとした宿を取りたい。しかし同じ状況で宿を確保したい人は大勢いるはず。時間との勝負だ。

昔旅行会社に勤めていたので、ツテを頼ってかつての同僚に電話をかけて状況を聞いてみた。彼は何と空港にいた。声は冷静だったが彼もてんてこ舞いの様子で、宿を頼むのはとても無理だった。ただ、「大きなホテルは旅行会社が抑えているから、小さいホテルを探した方がいい」とアドバイスをもらって、どうにか数日分の宿は確保できた。そして次は、帰国の予定日に飛行機が飛ぶかどうかだ。だが、これについては、誰もはっきりしたことを言える立場にない。当分の間は、バンクーバーに足止めされることになりそうだ。

ひとつ幸運だったのは、サンフランシスコに出発する前で飛行機がキャンセルされたことだった。もし飛行機が離陸した後に事件が起きていたら、どこかに緊急着陸させられていたはずだ。日本から来た家族は英語ができない。カミサンの負担が非常に重くなる。

また、サンフランシスコに着いていたとしても、今度はバンクーバーに戻ることはおろか、日本に帰国することも簡単にはいかない事くらいは想像に難くない。そうなったら、こちらでは手の打ちようがない。まさに不幸中の幸いだった。

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今日はこの事件について書かないわけにはいかないでしょう。北米では週末から各局で特集番組が組まれています。テレビをつければ、否応なしにあの日の惨事を繰り返し繰り返し見せ付けられます。

あの日、我が家ではこうした慌ただしい時間を過ごしました。事件の当事国ではないカナダでもほぼ同様の警戒態勢が敷かれ、一時的にショッピング・モールなどの人が多く集まる場所では立ち入りが禁止されたりしました。米国行きの飛行機に乗ることがちょうど重なったこともあり、恐らく普通の人以上に911の事件を強く意識せざるを得ませんでした。

事件の背景やその後の影響については、ここで書くに及びません。ただ、現在知られていることが事実のすべてではない可能性を指摘する声があることには驚きました。

これはカナダ国営放送 (CBC) の特集番組で知った事なのですが、米国政府の事故調査委員会が公表した内容『THE 9/11 COMMISSION REPORT』には隠された事実があると疑う人が少なくないのです。当時の映像を交えて疑いをなげかける人々の声を紹介した番組では、素人目にもおかしいと思えるものが確かにいくつかありました。

1) 建物が崩落していく様子を詳細に写した映像では、崩れ落ちていく部分とは別の、まだ崩れていない下の階から、いくつもの「爆発」と見られる噴出が見られます。政府側は、崩れ落ちるときの圧力で吹き飛ばされたものだと一笑に付していますが、ビルの崩落は飛行機が突っ込んだ衝撃によるものではなく、爆弾が仕掛けられていたのではないかと疑われています。事実、爆発を目撃したとの証言もあるようですし、構造的には崩落しないはずの建物だったことも、そうした疑いを支持します。ただし、ありえないはずの崩落が起きた原因については、対衝撃性の強度不足ではなく火災により鉄骨にひずみが起こり、徐々に崩れていったというコンピュータシミュレーションもあります。

2) 崩落は飛行機が突っ込んだ1タワーと2タワーだけでなく、無傷の7タワーでも何の前触れもなく突然起きています。この7タワーの崩落が何故起きたのかは、まだよく分かっていません。テロリストが飛行機の乗っ取りに失敗した場合に備えて、このビルにも爆弾を仕掛けていたのではという考えは、決して不自然だとは思えません。だとすれば、上の (1) の疑いを払拭することは難しくなります。

3) ペンタゴンでの惨事の場合は、飛行機が地上すれすれの低空でペンタゴンに横から突っ込んだのですが、建物に開いた釣り鐘方の大きな穴の形は、機体の胴体部分だけに応対しており、主翼やエンジン部分がぶつかって爆発したような痕跡が見当たりません。これについては、飛行機が突っ込む前にミサイル攻撃を受け、釣り鐘方の穴はその時に開いた跡ではないかという見方があります。飛行機はその爆発で空中分解しながらペンタゴンに衝突した。このように考える方が、建物の穴の形をうまく説明できるそうです。

他にもいろいろな疑いが持たれていますが、事故調査委員会ブッシュ政権への批判に繋がる内容を故意に隠しているという疑いをかけることは難しくありません。また、事故調査委員会の委員の一人も、限られた時間の中で調査を進めてレポートとして発表しなければならなかったため、何もかもを盛り込むことはできなかった、というような「言い訳」もしています。そして、北米の緊急番号と同じ「911に起きたこの事件は、あまりに出来すぎているように思えます。

世界を驚愕させ、超大国の威信をゆさぶったこの事件は、本当はもっと別の深い意味を持っているのかも知れません。世界のどこにいても、いつ自分の身にふりかかるかも知れないテロ。いろいろなことを各自が考える必要があるのではないでしょうか。与えられた情報は、すべてを鵜呑みにしてはいけません。どれが正しいのか、どれが嘘なのか、何を意図しているのか、何を信じるべきなのか、見分ける力が生死を分けることになります。歴史を振り返れば、その大切さや方法が分かるかも知れませんね。