バンクーバーの水事情

モントリオールでの話ですが、市内のプールで雑菌が繁殖し基準値を超えたため、市長が閉鎖を指示したそうです。カナダ東部では高温が続いており、プールは憩いの場だったので、特に子供達はがっかりでしょう。でも、何かあってからでは大変ですからね。日本でも違う意味でプールの閉鎖が相次いでいますが、対応の早さの違いは歴然としている感じです。

水というと、カナダはロッキーからのおいしい湧き水をみんな飲んでいるように思われるかも知れませんが、とんでもない話です。確かにミネラル・ウォーターはたくさん売ってますし、ロッキー周辺から採水しているものも多いようですが、水道水なんてまずくて飲めたもんじゃありません。日本の軟水とくらべ、硬度が高い硬水ですし、水質も悪い。中でもバンクーバーは、カナダの主要都市の中で2番目に「汚れた」水なんです。もちろん、フィルターなしではとても使えません。

つい最近(と言っても数年前ですが)、平原州(マニトバ州とかサスカチュワン州のような平原の多い州)の方だったか、水質管理がひどいために住民の中で死者が何人も出たこともありました。地方自治体が直接管理していたのではなく、委託されていた業者がずさんな管理をしていたため、消毒もされないまま雑菌がそのまま水道水として流されていたんです。沸騰しても飲み水としては使えない状態でした。もちろん、カナダでは大きくニュースで取り上げられました。でも、バンクーバーに住んでいると、これは他人事ではないという感じです。

今年は異常に高温が続き、水をがぶ飲みしています。今までは水道水を沸騰させてから冷ましたものを飲んでいたのですが、今年はお金がかかることを覚悟でミネラル・ウォーターに代えました。すると、毎年のように夏バテして体調を崩していたのが嘘のようになくなり、元気になったんです。これって、やはり水道水がよくないということでしょう。

バンクーバーで生活していると、たとえばシャワーを浴びたあと浴槽の水を拭き取らないでおくと、1週間もしないうちに青くなります。こすればすぐ取れますが、ただ水がついただけで青くなるんです。何が入っているんだろうって思います。その水は、台所の流しで使う水とは多少違うようなんですが、やはり心配です。恐らく水質が悪いために大量の消毒薬を溶け込ませているんだと思いますが、それだけ入っていると身体にいい訳がありません。実際、ストレスと相まって、昨年から手に湿疹などができてしまいました。原因はやはり水。薬をつけてだいぶよくなりましたが、水を使わない訳にはいかないため、よくなったり悪くなったりの繰り返しです。ちなみに日本に帰国していた時には症状が出ませんでした。

北米では、水を個々の家庭から使った分だけ料金を取るような制度はあまりありません。基本的には、不動産税の中に料金が含まれています。つまり、使った量に関係なく、所持している不動産の面積に応じて料金を取られている訳です。そのため、お金を払っているという意識が低く、節水しようとか、水質をよくしようという意識も欠けています。

市の方では、水質管理にはあまりお金をかけたくないようです。市民からもっと管理をしっかりするように苦情が出ると、「だったら家庭ごとに水道メーターをつけて料金を徴収することにするぞ。メーターを取り付ける料金も徴収するぞ」と言ってやり込めてしまいます。日本では信じられませんね。

それでも紆余曲折を経て、メーターを取り付けて使った量だけ料金を支払う実験を始めています。自分が使った分なら料金を払うことに文句は出ない訳だし、水質がよくなるのなら歓迎です。でも、反対する人もいます。それは大規模な農場や牧場などの経営者です。

彼らは大きな土地を持っていますが、面積単位での水の消費量は一般家庭の比ではありません。ほとんどただ同然で大量の水を使っている訳です。それが、使用量に応じて料金を取られるようになったらたまらない、という訳です。一見とても自分勝手な言い草ですが、もしそうなったら水道代が商品に転嫁され、消費者みんなが困ることになります。特に低所得者層での打撃が大きいでしょう。単純に割り切れる問題ではないんです。

兎にも角にも、水道水をまともに飲み水として使えない状況は、当分変わらないでしょう。自衛策としては、やはりミネラル・ウォーターを買って飲むしかありません。でも、水って重たいんですよ。(先日の米じゃないですけど)安くなった時になるべく買いだめするのですが、一回に買ってこられる量には限界がある。しかも、容器にはリサイクルのためのデポジットがかかるため(1本5セント、大きなものは15セント)、出費も多くなります。空き容器を返品すればデポジットは戻りますが、1ダース返しても60セント。店によっては、返却は一人1日1ダースまで、などと制限もしています。そのため、面倒なのでリサイクル容器専用のごみ箱に捨ててしまうことも少なくありません。お金を捨てている訳ですね。もったいない。

ここ数年、だんだん気温が上がっているように感じます。水はもっと貴重になってくるでしょう。地震など、イザという時のために水を蓄えておく必要もあります。そうなると、水の買い置きもいろいろ考えなくてはなりません。昔は水でこんなに苦労しなかったのに、だんだん住みにくい世の中になってきましたね。