新型インフルエンザに関しての日本政府の対応とメディアの報道姿勢についてちょっと思う

実は以前、あるニュースサイトの記事のタイトルを考える (翻訳ではない) 仕事をしてたことがあるんです。まあ、何ヶ月という程度の期間でアルバイト的なものだったんですが、この時はメディアの報道姿勢についていろいろ考えさせられました。

そのサイトは、恐らくこのブログを読んでいる人なら皆さんご存知のかなり大手なんですが、タイトルには字数制限があって (例えば最大15文字で、短くしても14文字か13.5文字など)、その中で「読者がリンクをクリックしたくなるような」言葉にしなければなりません。もちろん、記事の内容と無関係なタイトルをつけることはできないんですが、記事の中に少しでも出てくる内容を指すのなら、主題とは全然関係ないタイトルでもオーケーなんです。つまり、タイトルだけでは、内容はよく分からないと言えます。スポーツ新聞が「○○○か」の「か」をちぃーさく書くよりもこすからいやり方です。

以前、石原都知事が、やはりどこかのウェブサイトのニュースタイトルを見て、事件性の大小や重要度に関わらずどんな内容の記事も同じ (文字数という) 公平な扱いがされていて、偏見を持たずに多くのニュースを一目で把握できる、なんてことを発言されてたんですが、全然そんなことはないんですよ。知事はまんまと騙さちゃってるんですね。実際には、単にサイトのスポンサーに喜ばれるようにとか、アクセス数、ヒット数を伸ばすために、最大の努力が払われているんです。事実そういう風に指示されてましたから。

このブログでは、事あるごとにメディアを批判してきましたが、それは表面的な単なる意見ではなくて、裏の事情をある程度知った上で指摘しているものなんです。 (ちょっとだけ、説得力があるでしょ?)

とはいえ、それはメディアの世界の、ほんの一部分でしかないので、それだけでメディア業界を知っているような偉そうなことは言えません。でも、一般の人よりは、見出しや記事の書き方、映像の切り出し方について、フィルタをかけることが出来るとは思ってます。

そういうことを念頭に置いて、今日はメディアの報道姿勢について、そして政府の対応について、新型インフルエンザ (豚インフルエンザ) を題材にちょっと書いてみました。

あ、いや、正確には、昨日書いた記事に対して頂いたコメントへのコメント返しで書いたことをまとめただけなんですけどね。あんまり長くなっちゃったので、整理してみようと思ったんですよ。いえいえ、そんな、手抜きだなんて、まさにその通りですって。  (^^;



で、まずは、診療拒否に関するコメントとして、現場では一生懸命やっているのに、物理的に不可能なことができないだけで批判するのはいかがなものか、という趣旨 (だと解釈してます) のことに対してなんですが、これ、まさにその通りです。コメントでは、

>検査キットや薬が無かったら、診察も治療も出来ませんよね?

と指摘されていたんですが、この意見に対しては全面的に同意します。ただ、昨日の記事で言いたかったのは、その医師や病院の対応自体ではなく、それを伝えたメディアの報道や政治家について疑問があるってことなんですよ。当局というのは、診療施設ではなく、その上の国家機関を指した言葉です。

ちょっと考えてみてください。診療を拒否された患者は、その後どうなったんでしょうか? ただ放っておかれたのなら問題ですし、困りますよね。ここで医療機関がどのような対応をしたのか、それが重要なんです。

ちなみにこういう状況 (インフルエンザの疑いで駆け込んだ医療機関が対応できない状況) は、メキシコやアメリカ、カナダでは先行して起きています。でも、患者が放っておかれることは (少なくともアメリカとカナダでは) ありません。政府や州、病院のネットワークなどが連携して対処しているからです。対策を講じたのはかなり早かったと思います。

これに対して、日本ではどうだったのでしょうか? その担当医は、診察できないので、患者を受け入れてくれる別の診療施設を手配したでしょうか?

  • ケース1:患者を受け入れてくれる別の診療施設を手配した

もしそうなら、この医師や病院は責任を果たしています。その場合、メディアの報道の仕方に疑問があります。拒否したことしか書いてないからです。そこまで書くと、目を引く記事にならないし、つまらないニュースとして終わってしまうから、書かなかったのではないかと思っています。。

また、こうした状況が起きることは当然予測されていたはずなので、日本の政府や地方自治体が対応策を講じていると思いますが、今回それが機能したのなら、やはり問題はないはずです。これについても、やはりメディアの報道は触れてないようですから、不正確と言えるでしょう。安心させる内容なのに取り上げず、不安を煽るような部分しか伝えていないということになります。

逆に、それが機能していなかったとしたら、もしくはそのような対策が元々講じられていなかったとしたら、政府や地方自治体が責任を果たしてないことになります。この場合でも、メディアはそのことに触れていないと思うので、国に不利な情報を流していないということになります。(まさか報道規制はされてないでしょうから、メディア側が故意に視聴者を欺いたといえます。)

  • ケース2:患者を受け入れてくれる別の診療施設を手配しなかった

もし担当医が別の診療施設の手配をしていなかったとすれば、これはその医師と病院が責任を果たさなかったということになります。ただし、こうした事態に備えてどうするべきかを徹底させていなかった国の手落ちでもあります。政治家は一方的に病院側を責めているようですが、普段から手一杯の病院にすべてを押し付けた国の方が犯した罪は重たいはずです。

北米大陸での状況を目の当たりにし、時間的猶予が十分にあったにも関わらず、水際作戦だけで後のことは考えていないような状況なら、国として政治家として失格です。

これについても、政治家がどう発言したかだけを取り上げ、核心部分について何も触れていない報道をしているメディアは、情報操作をしていると言われても仕方ないと思います。やたらに不安を掻き立てているだけと言えるでしょう。

国民は、そういうことを冷静に考える必要があります。報じられたことについて、「へーそうなんだ」で終わらず、本当に報じられたことが事実なのか、記事として注目を浴びる部分だけを取り出して強調しているのではないか、隠されていることはないのか、などをよく見極め、いろんな意見を出し合うことが必要だと思います。でも、そうした様子は、残念ながら伺えません。



次に、日本の方が冷静で各個人がしっかり対応しており、カナダ (やアメリカ) は国民が無関心だから感染が拡大してるのではないか、というコメントに関してです。このコメントでは、北米の人がマスクをしていないのは、「スクに関しても機能的なマスクが簡単に手に入らないだけでしょう」という指摘もありました。

まず最初に断っておきますが、北米の人が新型インフルエンザに無関心な訳じゃありません。そのことが、日本にはきちんと伝わってないのだと思います。これだけの感染者を出しているのに、無関心な訳がないとは思いませんか? 国や州の方でも、国民に必要な薬や医療施設の受け入れ態勢をすでに整えていて、国民に不安要素を与えないように可及的速やかに対策を立てています。大事なことは、冷静に普段の生活を続け、専門家の間でも効用に疑問が出ているマスクの使用を除き、手洗いやうがいなどをするようしつこく伝えているという事実です。そして、感染した人、その疑いのある人については、マスクをして自宅や病院から出ないように指導してるんです。例えば今日も、感染者が出た学校では、その学校や学級を閉鎖して、きちんと対応しています。報道も、その事実を簡単に伝えるだけのものでした。

実際、カナダで最初の感染者が出た頃は、すでに回復している状態になってから当人 (2人) が自宅でテレビ (カナダ国営放送) の取材に堂々と出て、落ち着いて (というかどっしり構えて) 当時の当局による対応や現在の状況などを隠し立てすることなく答えていました。国民の関心がなければ、プライバシーに関わるようなそんな事を国営放送がしません。日本のように、(ニュースやワイドショーで絵になる) 不安がっている関係者の様子を映し出したり、まるで犯罪者を扱うような報道をすることもありませんでした。ただ、淡々と事実を伝えていただけです。

それからマスクについてですが、確かに今のカナダでは、日本のように機能的なマスクが簡単に手に入る状況ではないですが、マスクをすればいいというものではないですし (前述のように「予防」効果に疑問を持つ専門家も少なくありません)、必要だと思えば市販のマスクでも何でもしてるはずです。だから、無関心だとかいい加減だとかいうのは、非常に一面的なことしか見てない意見だと思います。でもそれは、このコメントをされた方が悪いのではなく、そういう報道しかせず、単一の情報しか手に入らないように仕向けているメディアに責任があるんです。

なので、日本のメディアの報道だけで判断せず、なるべく海外のソース (当事国の北米や WHO など) から情報を仕入れ、それがままならないのなら、メディアの報道についていろいろな観点から吟味するなど、メディアに乗せられないようにする努力を一人ひとりが行う必要があると思います。日本のメディアが、草なぎ君の騒動や松本サリン事件の時にどういう報道をしたかを思い出せば、お分かりですよね。

もう1つ、カナダで感染が拡大している要因の1つには、こちらにはまだ寒い地域があることが挙げられます。新型ウイルスが流行りだした初期には雪が降っていたりする所もあったくらいです (バンクーバーの近くでもまだ雪が結構残ってたりします)。バンクーバーダウンタウンでも、今日は暖かくなりましたが、2、3日前には最低気温が5度程度まで下がっています。つまり、カナダはまだインフルエンザや風邪の季節が終わってないので、感染が拡大しやすい環境にあるんです。

一方で日本は、すでに真夏のような気温になったりしているようですから、インフルエンザのウイルスが存在したとしても、症状が出ないか、罹りにくい状態になっていると考えられます。さらに、カナダもアメリカもメキシコと地続きで交流も日本よりはるかに盛んなため、どうしても感染が起きてしまうんです。実際、カナダの感染者のほとんどは、メキシコに行ってきた人たちです。感染者がカナダに入ってからウイルスを撒き散らしている訳じゃありません。

そういう条件の違いがあって日本よりも感染が広がっているのだということに、メディアの流す情報だけで、日本ではどれだけの人が気付いているでしょうか。たぶん、ほとんどの人はそこまで考えず、メディアの言うままに思い込んでいるのではないでしょうか。



カナダにいていろんなニュースを見るとき、もちろんカナダ国内のニュースを見ますが、アメリカやイギリスのニュースもそのままこちらでは放送しているため、テレビで見ることがでいます。また、日本のニュースはネットでよく見ます。今回の新型インフルエンザに関しては、WHO のページもチェックしていますので、カナダ国内、または日本国内だけの偏ったニュースソースだけで状況を判断していないつもりです。

そうした情報の収集をした上で、日本での報道は恐怖を煽るような部分だけを強調し、それを何度も何度も流して視聴者に刷り込み、視聴率を上げようとしているのだと、このブログでは判断し主張している訳です。単に、日本はダメとか、北米の方がいいんだとか、そういうレベルの話ではないんです。

そういう意味で、日本では偏った情報しか入らないため、均質的な意見が大勢を占めることになります。結果として、1つのことで国中が大騒ぎしたり、熱しやすく冷めやすい反応をすることが多くなるんです。ブームのようになれば、一番喜ぶのはメディアですから、日本の人はまさにそれに乗せられている状態だと思います。これは、よく考えると恐ろしいことです。政治家によるプロパガンダで、簡単に国民を操作できる状況にあるんですから。



結局、問題があってから混乱し困るのは、国民一人ひとりです。診療拒否をされた人、感染の疑いがあって隔離されている人、追跡調査をされている人、この人たちは、そういう立場になって初めて、報道されていることと違うぞと気付いたはずです。その時に慌てないためにも、情報を鵜呑みにすることは止めて、政治家や国の言い分にも十分気をつけておくクセを、今のうちから身に付けておいた方がいいかと思います。



これをおせっかいな事だと思われるのであれば、それは (この記事を読んだ) 方の判断ですから、それはそれでいいと思いますけど。