日本も総督制度を作ればいいのに

あー、とうとう国会が休会になっちゃいました。来年の1月26日まで。空転とういうか、崩壊状態です。

あ、カナダの話ですよ、日本じゃなくて。

連日、カナダの政局がやばいよって話を書いているわけですが、もう一度改めておさらいしてみます。というか、今日も急展開だったので、続報ってことですけど。
(日本ではまったく相手にされてないようで、全然ニュースにもなってないようですね ^^; カナダは国中が上に下にの大騒ぎなのに。所詮、カナダってそんな程度にしか見られてないんでしょうけど。。。)



10月29日に行われた下院の総選挙で負けた野党がヤケッパチになり、その1つ前の選挙まで与党だった Liberal (自由党) と NDP (新民主党) という2党が連立をし、ケベック州だけで活動し、そのくせ国政に進出してケベックの分離・独立を唱え国家分離を掲げる Bloc Québécois (ブロック・ケベッコワ) がそれを支持し (連立には加わらない)、数の上では与党を上回ったから政権をよこせと、選挙が明けて6週間しか経ってないのに言い出したわけですよ。

ちなみに選挙で勝ったのは現与党の Conservative Party of Canada (カナダ保守党) で、党首のスティーヴン・ハーパーは今回が2期目の首相を務めています。それから、カナダは下院が選挙で選ばれた議員からなる議会で、上院議員は首相により選出されます。実質的に下院が議会を運営していることになります。

で、カナダでは、確かに多数党が政権を握ることになってるんですが、憲法には議会で「Confidence」を持っていることが条件と書かれています。Confidence は、ここでは議会の信任という意味です。

こういう状況において連立野党側は、議会で信任投票をせよと迫り、「He lost Confidence」とまくしたてて、早く首相の座を降りろと現首相のハーパーに食い付くわけです。もう、年末の予算会議なんかそっちのけで。つまり、国会運営が成り立たなくなってしまったんです。

もちろん与党側も黙ってなくて、総選挙で第一党に選ばれた、それも前回より議席数を増やして与党になったのだから、単に寄せ集めで数が上回るなどというだけの理由で、選挙に負けた政党に政権を渡すわけにはいかないんだと反論するわけです。

実際、連立する2党は政治理念も公約も違うし、Bloc Québécois からの支持を取り付けるために選挙公約だった税金引き下げを取り消すし、政権を取ってからどうやって両党の政策をまとめるかや大臣ポストの配分など、全然明らかにしてないんです。ただ単に、数が多いから政権よこせと。まるで子供のけんかです。しかも連立野党は、選挙で議席数を大幅に減らし党首を辞任することになっている Liberal のディオン党首が主導権を握るというから笑っちゃいます。

このディオンって人は、政治家としては能力があると言われているんですが、英語ができない。カナダ生まれのカナダ人ですが、フランス語はペラペラでも、英語になると聞き取りも発音も外国生まれかと思うほど。こちらのニュースでもよく取り上げられます。選挙のときも、党首討論などで何言っているか分からないと非難ごうごうでした (ほんと、ひどいですよ)。こうした人が、しかも辞任すると言っていた人が、自分が首相になりたいからって理由でわがままを言っているとしか思えないような行動を取るのは、どう考えてもまともじゃないですよ。この人が首相になったら、とんでもないことになるでしょう。



そして、こうした騒ぎを最終的に手打ちにできる人は、カナダの宗主であるエリザベス女王から全権を委任された、名代の Governor General (カナダ総督) だけなので、その判断が注目されていたわけです。

このカナダ総督というのは面白いもので、首相により指名されるんですが、議会運営に支障が生じた場合に首相を罷免したり、新首相を指名することができるんですね。つまり、お飾りの存在ではなく、法案や内閣の最終承認、国会の開会や閉会、選挙が必要と判断すれば議会を解散するなどの権限を持っていて、逆に言えば、拒否権を発動して議会も首相も押さえ込むことが可能なんです。ま、アメリカなら大統領に匹敵するくらいのすごい力を持っている地位の人です。

現在は黒人女性のミカエル・ジャンという人が務めていて、フランス国籍を持ってましたが、総督就任にあたりフランス国籍は返上したそうです。オバマさんより先に黒人でこの地位についたんだから (しかも女性で)、カナダの方がずっと進歩的な感じもするんですが、こんな騒ぎをしてるんじゃ、そうとも言えませんね。

ただ、総督はこれまではほとんど儀式的な承認を行うくらいだったので、その存在自体が疑問視されたこともありました。海外に出かけても、「総督って何?」っていう人がほとんどだし。でも今回の騒ぎで、Governor General という存在が必要だなってことがよく分かりました。いや、居てくれてほんと良かったですよ。

で、最終決定は来週はじめに出されることになっていたんですが、今信任投票をやられたら勝ち目はないということで、ハーパー首相は Governor General に直談判し、しばらくの間国会を休会するよう求めました (ちなみに信任投票は月曜日に行われる予定でした)。その結果、Governor General が休会を認め、来年1月24日に議会開会の式辞として Throne Speech なる宣言をし、26日に再会するよう指示を出したんです。これでハーパー首相の思惑どおり、信任投票が回避され、出鼻をくじかれた連立野党は絶好のチャンスを逃したわけです。

しかーし、これに納得できない連立野党側は、記者会見などで盛んに「He lost Confidence」、「He lost Confidence」とまくし立てます。記者から、どうして連立するんだとか、予算を先送りすることになるがそれについてどう思うか、などと聞かれても、「Because he lost Confidence」と言って、具体的な政策などは一切説明しません。信任投票は実際にはされてないのに、不信任だと言い切って自分達の正当性を主張するだけです。とにかく、数はこっちが上なんだってことを繰り返すばかり。あまりのひどさに、言葉もありませんよ。



まあ、こんな連中が暴走して無理やり政権を取っていたら、大変なことになったでしょう。もちろん、1月に国会が再会すれば同じことが繰り返される可能性はありますが、Governor General というブレーキ役がいたお陰で、国民も状況を冷静に判断する時間が持てたわけです。有力議員からも、1月までは連立は持たないだろうという意見が聞かれます。恐らくは、現政権がそのまま続くことになるでしょう。

仮に1月に状況が変わらなければ、再度総選挙で国民の審判を受けるか、連立政権が誕生するものの不安定ですぐに崩壊し、やはり総選挙になるか、いずれにしても混乱は避けられないでしょう。この不況時に、それだけは勘弁してもらいたいです。

こんなとんでもない政治が行われているカナダですが、Governor General が間に入ったことで冷却期間がもたらされ、混乱は多少収まったことから、一応政治制度は機能しているってことも分かりました。この決定や経過を見て、Liberal 内部からも連立は進めるがディオンは降ろすという意見が出てきているので、連立内部の亀裂により1月までには変化が起きる可能性もあります。ぜひ、そうなって欲しいものです。



一方、政治制度という点では、日本の政党政治もひどいですよね。自民党が勝手に持ち回りで首相を決め、行き詰ると「やーめた」と言って投げ出し、選挙が近づくと人気のある人を新しい首相にしてとりあえず支持率を上げ、その手もうまくいかないとなると、選挙を先送りする。あまりに国民を無視しすぎでしょう。民主主義なんてかけらも見えない。今は選挙に勝てないから、時期を探っているなんて、平然と言っちゃいますもんね。誰のための選挙だと思っているのか。

そんな腐敗政治が繰り返されないように、日本にも首相の指名や罷免ができるような立場の人を置いたらどうでしょうかね。政党や議会とは距離を置いて、まさに天皇の名代みたいな感じで。天皇は象徴なので実権はないわけですが、名代には権限を与え、国民の直接選挙 (かそれに近い形) で選出されるような仕組みを、今からでも作れると思うんですけどね。

まー、政策や制度を作るのが今の国会議員である以上、自分達に都合の悪い制度を作ろうとするわけがないでしょうけどね。アメリカのように、「Change」を掲げて新風を吹き込むような人は出てこないんでしょうか。あ、今の政治家の中に、人材は見当たらないですね。